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翌日。
秋在はまたしても、欠席をした。
そういう日はだいたい、女子が冬総へ寄ってくる。
「今日はあの子、休みなんだね?」
秋在のことだ。
寄ってきた女子のうち一人が、確認するように呟く。
――そんなこと、見たら分かるだろうに……。
そう思っても、冬総は口にしない。
「聞いてよ、夏形くんっ!」
すると、一人の女子が声を荒げた。
冬総は若干驚きつつも、黙って耳を傾ける。
「あの子ってね、おかしなことばっかり言うんだよ?」
――なんの話だ?
冬総は眉を寄せて、小首を傾げた。
話題に興味を持ってもらえたと思った女子が、更にヒートアップする。
「この前、夏形くんはあの子と付き合ってないって言ってたでしょ? だから私たち、あの子に『変なことを言うのはやめて』って言ったの」
「あ、そうそう! ……そしたら、なんて言ったと思う?」
スマホを握る冬総の指が、ピクリと跳ねた。
だけど、なんとかポーカーフェイスを気取る。
「さぁ? ……なんて、言ってたんだ?」
声も、震えずに済んだ。
女子たちは立腹したまま、秋在が言っていたであろう言葉を……復唱した。
「『ナツナリくんが付き合ってないって言っても、ボクは付き合ってるって言う。ボクは怖くないから、真っ直ぐなボクでいる。……じゃないと、ナツナリくんに申し訳が立たない』……だって!」
「へ……?」
それは。
あまりにも。
――あまりにも、秋在らしい言葉だった。
(何だよ、それ……ッ)
マヌケな声を出した冬総が、ポーカーフェイスを崩す。
せっかく交際を否定したのに、それでは意味がない。
そう、思わなくてはいけないはず……なのに。
(――何で春晴は、どこまでもカッコいいんだよ……ッ)
――誇らしかった。
自分の選んだ相手は、どれだけ否定されても、自分を曲げない。
そしてその理由に、冬総を持ってきてくれた。
秋在が女子の言葉に対抗したのは、自分の為だけではなく……自分を選んでくれた、冬総の為でもある。
その姿勢が、惚れ直すには十分すぎるほど……心を打たれた。
しかし、女子は当然……ご立腹だ。
「あの子、あぁやって変なキャラ作って、夏形くんにかまってもらいたいだけだよ、絶対!」
「あんな子、放っておいたらいいよ! 冬総くん、かわいそう!」
ふと、冬総は考えた。
(――まさか……春晴をいじめてる、犯人って……?)
勿論、憶測の域を越えない。
だが……妙に、確信めいたものがあった。
けれど。
「まぁ、先生に頼まれてるからな……仕方ないって」
笑いながら、曖昧に誤魔化す。
冬総はそんな自分が……あまりにも、惨めに思えた。
(俺は、カッコ悪いな……)
本当に優先すべきものがなんなのか、分かっているのに。
冬総はどうしても、秋在にはなれなかった。
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