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図らずも、犯人の目星がついてしまった。
しかし、肝心の【決定的な証拠】がない。
憶測だけで糾弾するなんてマネ、してはいけないのだ。
もしも失敗したら、秋在が更に危険な目に遭わされるかもしれない。
それだけは、絶対に引き起こしてはいけないのだ。
そうして悩んだ、翌日。
教室にいた秋在が、ふらり、と、教室から出てしまった。
(今、春晴を一人にするのは……)
危険。
そう思った冬総は、慌てて席を立った。
けれど、その行く手を……阻まれる。
「夏形くん、夏形くん! 見て、このページ!」
「メチャクチャ可愛くな~い?」
女子だ。
いつも冬総に話しかけてくる女子が、秋在の不在をいいことに、雑誌を見せてきた。
(今はそれどころじゃねぇのに……!)
せめて、秋在がどこに行ったかだけでも把握しなくては。
そうすれば、後でいくらでも追いかけられる。
だが、女子を無碍にすることもできない。
それは、冬総のイメージにそぐわないからだ。
冬総は曖昧な笑みを浮かべながら、どうしたものかと……思案した。
――そして。
――冬総は、閃いてしまった。
「――スマホのGPS、俺と同期していいか?」
時刻は、放課後。
場所は、秋在の部屋。
真剣な眼差しで、冬総は秋在に迫っていた。
さすがの秋在も……その申し出には、ドン引きらしい。
「……な、何で……?」
演技なのか、本心からなのか。
秋在は顔を引きつらせながら、自分に迫ってくる恋人を眺めた。
しかし冬総は、自分がおかしなことを言っているつもりはない。
「お前がどこにいるのか、いつでも知っておきたいからだ」
「なんの、ために……?」
スマホの画面を向けながら、冬総は真剣な表情で答える。
「――お前のことが、好きだから」
瞬間。
――秋在の頬が、朱に染まった。
「……そ、そう……」
セックス以外で表情を崩している秋在を見るのは、レアだ。
しかも、赤面。
……秋在が赤面している姿を見るのは、冬総にとって初めて。
(う、可愛いな……ッ)
思わず。
冬総は秋在の頬に、キスをした。
すると更に、秋在が顔を赤くする。
「春晴、好きだ。だから……俺と、同期してほしい」
「……っ」
位置情報を把握されるだなんて、秋在にとったら不快で堪らないかもしれない。
学校を休んだ理由を訊かれるだけで、秋在は機嫌を損ねる。
だから、個人的な情報を搾取されるのは許せないかもしれない。
そんな不安は、当然あった。
しかし……。
「……ボクと、同期……して、っ」
頬を赤らめたまま、秋在はそう呟く。
華奢な手は、冬総の袖を掴んでいた。
(……ヤバイ、勃ちそう……ッ)
照れている秋在を見るのは、初めて。
それに加えて……妙に、意味深そうな台詞。
「春晴。……抱きたい」
「な、何で……っ?」
「好きだから」
「……そう言えば、何でも許すわけじゃないんだけど」
数分後。
秋在は、冬総と位置情報を同期させ。
しっかりと、抱かれた。
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