48 / 182

3 : 10

 図らずも、犯人の目星がついてしまった。  しかし、肝心の【決定的な証拠】がない。  憶測だけで糾弾するなんてマネ、してはいけないのだ。  もしも失敗したら、秋在が更に危険な目に遭わされるかもしれない。  それだけは、絶対に引き起こしてはいけないのだ。  そうして悩んだ、翌日。  教室にいた秋在が、ふらり、と、教室から出てしまった。 (今、春晴を一人にするのは……)  危険。  そう思った冬総は、慌てて席を立った。  けれど、その行く手を……阻まれる。 「夏形くん、夏形くん! 見て、このページ!」 「メチャクチャ可愛くな~い?」  女子だ。  いつも冬総に話しかけてくる女子が、秋在の不在をいいことに、雑誌を見せてきた。 (今はそれどころじゃねぇのに……!)  せめて、秋在がどこに行ったかだけでも把握しなくては。  そうすれば、後でいくらでも追いかけられる。  だが、女子を無碍にすることもできない。  それは、冬総のイメージにそぐわないからだ。  冬総は曖昧な笑みを浮かべながら、どうしたものかと……思案した。  ――そして。  ――冬総は、閃いてしまった。 「――スマホのGPS、俺と同期していいか?」  時刻は、放課後。  場所は、秋在の部屋。  真剣な眼差しで、冬総は秋在に迫っていた。  さすがの秋在も……その申し出には、ドン引きらしい。 「……な、何で……?」  演技なのか、本心からなのか。  秋在は顔を引きつらせながら、自分に迫ってくる恋人を眺めた。  しかし冬総は、自分がおかしなことを言っているつもりはない。 「お前がどこにいるのか、いつでも知っておきたいからだ」 「なんの、ために……?」  スマホの画面を向けながら、冬総は真剣な表情で答える。 「――お前のことが、好きだから」  瞬間。  ――秋在の頬が、朱に染まった。 「……そ、そう……」  セックス以外で表情を崩している秋在を見るのは、レアだ。  しかも、赤面。  ……秋在が赤面している姿を見るのは、冬総にとって初めて。 (う、可愛いな……ッ)  思わず。  冬総は秋在の頬に、キスをした。  すると更に、秋在が顔を赤くする。 「春晴、好きだ。だから……俺と、同期してほしい」 「……っ」  位置情報を把握されるだなんて、秋在にとったら不快で堪らないかもしれない。  学校を休んだ理由を訊かれるだけで、秋在は機嫌を損ねる。  だから、個人的な情報を搾取されるのは許せないかもしれない。  そんな不安は、当然あった。  しかし……。 「……ボクと、同期……して、っ」  頬を赤らめたまま、秋在はそう呟く。  華奢な手は、冬総の袖を掴んでいた。 (……ヤバイ、勃ちそう……ッ)  照れている秋在を見るのは、初めて。  それに加えて……妙に、意味深そうな台詞。 「春晴。……抱きたい」 「な、何で……っ?」 「好きだから」 「……そう言えば、何でも許すわけじゃないんだけど」  数分後。  秋在は、冬総と位置情報を同期させ。  しっかりと、抱かれた。

ともだちにシェアしよう!