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それから、数日間。
秋在は学校にいる間……いつも以上の頻度で、冬総の近くに居ようとしていた。
突然、どうしたのか……。
……冬総が考えられる可能性は、一つしかない。
(俺と一緒に帰れないの、そんなに寂しいのか……?)
もしも、それが理由での接近なら。
当然、秋在が可愛く見えて仕方なかった。
そんなことを考えて、胸を温めていたある日の土曜日。
バイトを始めて一週間も経っていないが、冬総には持ち前のコミュニケーション能力がある。
バイト先の人と仲良くなるのに、大して時間はかからなかった。
客足が引き、束の間の穏やかな時間を、冬総はバイトの先輩と談笑しながら過ごしていると……。
――見覚えのある人物が、店の中に入ってきた。
「いらっしゃいま――秋在?」
秋在だ。
休日なので私服を着ている秋在は、レジには目もくれない。
(私服の秋在、初めて見た……! うわ、可愛い……ッ!)
許されるのなら、写真を撮りたいくらいだ。
冬総が秋在に目を奪われていると、バイトの先輩が声をかけてきた。
「夏形くんの知り合い? 同級生? 可愛い子だねぇ。……男の子、かな? いや、女の子……?」
「男ですよ。同級生で、俺の恋人です」
「へぇ! そうなんだ! ……えっ?」
「可愛いですよね? 分かります。……あぁ、欲しい物があるなら、俺が買ってやりたい……ッ」
「お、う、うんっ! そっかそっか!」
秋在の自慢をするのは気分がいい。
冬総は若干テンションを上げながら、秋在を眺めた。
秋在は秋在で、冬総のことは一切気にせず、商品を見ている。
まさか土曜日の朝から秋在を見られるとは思っていなかった冬総のテンションは、上限を知らずに上がっていく。
「先輩……俺が金払ったら、駄目ですかね」
「うん、駄目だね! ちょっと落ち着こうか!」
「先輩こそ、一回落ち着きましょうよ。……さっきからどうしたんですか? 妙にソワソワして。…………まさか! 秋在のことが好きになったとかですか?」
「うぅううん落ち着いて!」
さすがに、恋愛沙汰でバイト先の先輩と揉めたくはない。
……かと言って、秋在を引き合いに出された冬総が、大人しくするわけはないが。
そうこうしていると、秋在が商品を持ってレジにやって来た。
すかさず、冬総が応対する。
「秋在、おはよ!」
ピッ。……クリームパン。
「秋在も、ここのコンビニに来るんだな」
ピッ。……ペットボトルのお茶。
「休みの日にも会えるとか、結構嬉し――は?」
商品をレジに通していく冬総の手が、三つ目の商品で……止まった。
――ピッ。
――コンドーム。
(……って、コ、コンドームッ! なッ、なんでわざわざ俺のレジで買うんだッ?)
これは、秋在流のお誘いなのか。
それとも、単純に冬総への嫌がらせかもしれない。
どっちなのか分からず、冬総は秋在の顔を見た。
しかし……秋在は普段と変わらない、無表情寄りの笑顔だ。
「公園で待ってる」
持って来ていたエコバッグに、秋在が商品をしまっていく。
戸惑っている最中の冬総だったが、秋在が『待っている』と言うのなら、応じる以外の選択肢はない。
「お、おぉ……。休憩時間になったら、行くわ」
「うん。……頑張ってね」
結局。
休みの日でも秋在は可愛い、ということは分かったが。
秋在がコンドームを買った理由は、分からなかった。
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