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休憩時間になり。
冬総は急いで、近くの公園へと走った。
秋在の姿を探すこと、数秒。
公園に置いてあるベンチで、瞳を閉じている秋在を発見した。
どうやら、座ったまま寝ているらしい。
「秋在、秋在……? おーい、風邪ひくぞー?」
軽く肩を揺すった後、隣に座る。
そうすると、秋在はゆっくりと……瞼を上げた。
「お待たせ、秋在。……俺に、用事でもあったのか?」
寝起きの秋在に、温かいココアを手渡す。
冬総からココアを受け取った秋在は、ぼんやりと、空を見上げた。
「フユフサ。……空、キレイ?」
「空?」
促されるがまま、冬総も顔を上げる。
そこに広がるのは……快晴。
秋晴れと呼ぶに相応しい空が、頭上には広がっていた。
「そうだな。……うん。すげぇ綺麗」
「そう」
缶のプルタブが、秋在の手によって引かれる。
「空がキレイだったから、切り取ろうとした。だけど、それは共有とは程遠い。だから、しなかった」
「ん? ……ンン、そうか……?」
『切り取る』も『共有』も、よく分からない。
だがきっと……『綺麗な空だったから、一緒に見たかった』という意味だろう。
秋在の言葉をそう解釈し、冬総はもう一度、空を見上げた。
「わざわざ教えてに来てくれて、ありがとな」
「フユフサもね」
秋在はそう答え、ココアを二口飲む。
そして、そのままココアの入った缶を、冬総に差し出した。
だが、冬総は缶を受け取らない。
「……ん、っ」
代わりに……ココアを飲んだばかりの秋在に、キスをした。
すぐに唇を離し、冬総は笑う。
「俺は、こっちの方がいい」
「ボクのココア、盗った」
「人聞きが悪いな……」
まだ一週間も経っていないけれど、冬総は若干……秋在不足だ。
そんな冬総からすると……一回のキスだけでは、物足りない。
「秋在……もう一回、したい」
「うん。いいよ」
「秋在は優しいな。……大好きだよ、秋在。愛してる」
「うん。ボクも。……んっ」
柔らかな唇に、冬総はキスを落とす。
角度を変え、舌を入れ、秋在の味を堪能した。
「ん、ぅ……っ。……フ、ユ……フサ、っ」
すると、秋在がなにかを思い出したらしい。
唇を離し、缶をベンチに置くと、秋在はそのままエコバッグに手を突っ込んだ。
そのエコバッグは、先程コンビニで使っていたもの。
エコバッグの中から、秋在は【ある物】を取り出した。
「……ね。コレで、一緒に遊ぼ」
――それは、未開封のコンドームだ。
「……【そういう遊び】って解釈で、いいのか?」
「やってみてもらわないと、分かんない」
少しだけ戸惑っている冬総を見て、秋在は笑う。
その笑みはまるで、小悪魔的な妖しさを秘めていて……。
冬総をその気にさせるには、十分すぎた。
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