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5章【時限性アニバーサリー】 1

 ――それは。  ――突然の、出会いだった。 「――あら、いらっしゃい~! あなたが『フユフサ』くんね!」  秋在の誕生日、当日。  早朝に、冬総は秋在の家を訪れていた。  すると……どこかに出掛けるような身支度を済ませていた男女二人と、遭遇したのだ。 「おはよう『フユフサ』くん。……秋在の父です」 「私は、母で~すっ!」  ――それは、秋在の両親だった。  どう見ても若々しい二人の男女を見て、冬総は戸惑う。  ――まさかインターホンを鳴らすより先に出迎えられるなんて、想定していなかったからだ。  ――しかも、相手は恋人の両親。  いくら恋愛経験がそこそこある冬総だとしても、狼狽えて当然だろう。 「お、おはようございます……! はじめまして。……夏形冬総、です」  それでも、マイナスの印象を与えるわけにはいかない。  冬総は慌てて頭を下げ、挨拶をする。  二人の印象を、一言で表現するのなら……。  父親は【厳格】で、母親は【陽気】だろう。  にこやかな笑みを浮かべた母親が、冬総の手を握る。 「アキちゃんったら、どんな人とお付き合いしてるの~? って訊いても、抽象的なことしか教えてくれないんだもの~! 会えて嬉しいわっ!」 「こちらこそ、会えて光栄です……ッ」 「やだっ、礼儀正しい~! それにしても……ヤッパリ親子なだけあって、男の子の好みが似てるのかしら~? お母さんにとっても好みかも~!」 「んんっ、んっ! んんっ!」 「あらっ! もちろん、お父さんが一番よ~っ!」  冬総に対して乙女心全開で接してくる母親を見て、父親が複雑そうな顔をしていた。  不思議な価値観を持つ秋在からは、あまり想像できないタイプの家族だ。 (賑やかなご両親なんだな……)  最愛の妻から愛を告げられ、父親は気難しい顔をしているが……嬉しそうに見える。  すると、父親が咳払いをする。 「んんっ! ……秋在なら、部屋で寝ている。今日は、正式に約束をしていたのだろう? なら、部屋に行くといい」 「お母さんたちはね、これからデートに行くのよ~! アキちゃんが『家族でのお祝いは明日にする』って言ってたから! ……今日は、お泊りしていってもいいわよ~?」 「母さん……!」 「お母さんたち、今日は帰らないからっ! ……それじゃあね~!」  父親の腕を引き、母親が歩き出した。  ウィンクをした後、サービスかのように投げキスも送りながら。 「お、お気をつけて……!」  嵐のような両親を見送り、冬総は春晴家に入る。  ……今日は、秋在の誕生日。  普段の春晴家では、誕生日に両親への感謝を伝えるらしい。  だが、今日は誕生日である秋在自身をお祝いする。  冬総とのデートを優先して、秋在は両親への感謝を明日伝えるらしい。 (今のが、秋在のご両親か……)  どちらもやはり、秋在に似ていない。  目や鼻など、顔のパーツは似ている部分があったが……性格は、どちらにも似ていなさそうだ。  けれど、分かったこともある。 (……いい人そうだな)  息子の恋人が、頭を金色にした同性でも……決して、否定してこなかった。  秋在自身の意思を尊重してくれている……ということだろう。  胸をほっこりと温めつつ、冬総は秋在の部屋へ向かった。

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