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その後、数回の性交を終えて。
二人はベッドに寝転がり、話をしていた。
「親父はさ、俺がもうちょっと子供の頃……事故で、死んだんだ。即死だったらしい」
「うん」
「それで……。…………あのさ。ちょっと、話変わってもいいか?」
「うん。いいよ」
冬総は微笑み、自分の髪に指で触れる。
「……俺が髪の毛を染めたのはさ、秋在に憧れたからなんだ。……ピアスも、そう。校則違反だってのは分かってるんだけど、自分のしてみたいスタイルを……無性に、貫きたくなった」
「そうなんだ」
「別に、非行とかじゃねェよ? ただ……【周りの目】ってのにビビるのはやめて、自分で作っちまった枠から外れてみたかったんだ。……悪いことだってのは、分かってるけどさ」
ピアスに、秋在が手を伸ばした。
その手を、冬総は握る。
「秋在に憧れたのが一番の理由だけど、本当はそれだけじゃない。……母さんに、区別してほしかったんだ」
「……お父さんと?」
「そう、親父と。……父さんは公務員だったから、髪の毛とか染めてなかったんだ。秋在の父さんみたいに【厳格】って感じのイメージじゃないけど、チャラいってワケでもなくてさ。……だから、俺が髪を染めたら、親父と分けて考えてくれるかなァって。そんな、言っちまえばただの【浅知恵】だよ」
秋在の指にキスを落とし、冬総は笑う。
「けど、母さんは俺を見て……『あなた、そういう髪型も似合うのね』って、笑ったんだ。……俺なら、もっと驚くぜ? 自分の家族が、なんの相談も前振りもなく髪の色変えてたら」
「……それって、イヤな話?」
「いや、あ~……うぅん、どうだろうな? 不幸自慢ってワケじゃないけど、笑い話って言い切ることもできない……かな。……複雑な話だ」
「そっか。複雑な話なんだね」
今度は秋在が、冬総の指にキスをする。
その様子を眺めていると、冬総の表情はまた、柔らかいものになった。
「……俺ってさ、もしかしたら……ずっと、逃げてただけなのかもな。母さんと腹割って話したら、親父が死ぬ前の関係に戻れたかもしれないのに……ずっと、馬鹿みたいにビビっててさ。……情けないよなァ」
秋在の頭を撫でようと、手を伸ばす。
しかし。
――その手は、秋在の頭を撫でることができなかった。
「――ボク、フユフサの部屋……見たことなかった」
突然。
秋在が、起き上がったからだ。
どうして起き上がったのか。
それだけではなく、言っている意味も。
秋在の言動がなに一つ理解できず、ベッドから下りる秋在を、冬総は呆然と眺める。
「は……? あ、秋在……?」
「事実は小説より奇なり」
「え、あ、ん? いきなり、どうし――」
「論より証拠」
床に散らばった冬総の制服を、秋在は手渡す。
「――行こう」
――マジかよ。
そんな言葉も出せずに。
冬総はすぐさま、着替えることを余儀なくされた。
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