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状況を整理しよう。
秋在の症状は、主に熱らしい。
昨日の段階では……そこまで高温というわけではなかったが、秋在にとってはれっきとした風邪にあたるほどの高さ。
ちなみに秋在は今、部屋で寝ているらしい。
秋在の父親は現在、仕事のため不在。
母親はというと……これから、町内会の集まりに行かなくてはいけないらしい。
集まりの理由は……。
「新年会の打ち合わせ、ですか。……それって――」
「『アキちゃんより大切なことなのか』って言おうとしてるでしょ~? もうっ、フユくんったら落ち着いて? 逆に訊くけど、フユくんにとってアキちゃんより大切なことってあるのかしら?」
「ないですけど」
「それじゃあ、お母さんがなにを言ったって納得してくれないじゃない~。そんなの、ズルいと思わない? だったら、そこに論点を定めて言い合うだけ、時間のムダでしょ~? ……はい、論破っ」
「ぅぐ……ッ」
さすが、秋在の血族。
冬総が口で勝てるはずはなかった。
仕方なく、冬総は閉口。
……顔には『納得? していませんけど?』と書きながら。
「話を戻すわよ~? ……こほんっ。それでね、お母さんはどうしても家を空けなくちゃいけないの。だけど、いくら高校生でも風邪っぴきの我が子を家に一人で置いておきたくないのよ~」
なるほど、と、冬総は頷く。
「それで、俺を呼んだ……ということですか?」
「そうなの、そうなのよ~! ……ごめんなさいね、お母さんったら……落ち着きがなくって」
「お茶とお茶菓子を用意しながら俺のことを待っていてくれたのに、どこが落ち着きないんですかね……?」
「やだ~、フユくんのイジワルさんっ! なにかしてないと落ち着かなかったんだもの~!」
コミカルな反応を返す母親を見て、冬総は対応に戸惑った。
(どことなく秋在に似てるせいか……ちょっと、可愛く見える……)
弟である秋有のときもそうだったが……さすが、DNA。
内心で妙にほっこりとした気持ちになりながら、冬総はお茶を啜った。
「……って、あぁ~っ! もうこんな時間~! ……フユくん、ごめんなさいね? お母さん、もう行かなくちゃ……!」
「秋在のことは、俺が責任を持って守ります!」
「そのまま責任とってお嫁さんにするのは、まだダメよ~? 二人共、学生さんなんだから~」
「いやだな、お義母さん……気が早いですよ! そのときは正式な挨拶をしに来ますので、もう少し待っていてください!」
「本当に情熱的ね~!」
軽口に似た打ち合わせを終えた後。
二人は同時に、立ち上がる。
「それじゃあ、お母さん行ってくるわね? 早くて夕方……遅くても、夕方には絶対帰ってくるから~!」
「ご安心を! 深夜まででも大丈夫です! 俺にお任せください!」
玄関へ向かう母親にそう宣言をし、その背中を見送った。
内側から鍵を閉め、冬総はクルリと振り返る。
(秋在……ッ!)
迷うことなく、秋在の部屋へ向かう。
通路を進み、部屋の前に立ち……念の為ノックをしてから、入室。
「秋在、大丈――」
目に、飛び込んできたのは。
静かに寝息を立てている、秋在の姿。
しかし、冬総は目を奪われてしまった。
(――俺があげた抱き枕……使ってるところ、初めて見た……ッ!)
秋在は眠ったまま、冬総が誕生日にプレゼントをした抱き枕を抱いている。
それが嬉しくて、冬総はまじまじと秋在を眺めてしまう。
「……秋在、ちょっとごめんな」
そして、そっと……その様子を、写真に収めた。
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