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 いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。  目覚めた冬総は、妙な違和感に気付いた。 「……何だ、コレ……?」  枕元に、見覚えのない包みが置いてあるのだ。  包みに手を伸ばした冬総を見て、笑う声が、一つ。 「おはよう、フユフサ」 「わ……ッ! あ、秋在……? 先に起きてたなら、起こしてくれて良かったんだぞ?」 「寝顔、可愛かったよ」 「……惚れ直した」  上体を起こし、冬総は自分の髪を軽く撫でる。  男前な秋在に胸キュンするのも悪くないが、それよりも気になるのは、枕元に置いてある包みだ。 「ホントはね。フユフサには、サンタさんをあげたかったんだ」 「は……?」  思わず、冬総は秋在を振り返る。  秋在が嘘を吐いているようには、見えない。 「でも、捕獲作戦は失敗した。だからボクは、我が家のサンタさんに協力要請したの」 「秋在の家の、サンタ……?」  同じく、秋在が上体を起こす。  そして……枕元に置いてある包みを、冬総に手渡した。 「開けて。今、見て」  どうやら、この包みは冬総へのプレゼントらしい。 (秋在の家のサンタって、秋在の両親ってことか?)  秋在の言っている意味は、あまり分かっていない。  が、とりあえず、言われるがままに包みを解く。  ――そこには。 「――こ、コレは、まさか……ッ!」  ――春晴家のサンタに協力要請をしないと手に入らない。  ――貴重な、プレゼントが入っていた。 「――秋在のアルバム……ッ!」  入っていたアルバムを、ペラペラとめくる。  最近の秋在だけではなく、赤ん坊の頃の写真まで。  どのページにも、秋在が沢山写っていた。 「お父さん、写真のデータ全部保存してたんだって。だから、急いで現像したの」 「まさか、秋在の熱がなかなか下がらなかったのって……?」 「二日前から作り始めたから、夜更かししちゃって……」  秋在が、縮こまる。 「……ごめんね、フユフサ」  ――ズドン、と。  ――冬総の胸が、射貫かれる音。  ……勿論、冬総にしか聞こえない幻聴だが。 「世界一、嬉しい……ッ! 毎日見る……ッ!」  自分のために無理をされるのは、正直、悲しいという気持ちもある。  だが、今ここで返すべき言葉は……そうじゃない。  喜ぶ冬総を見て、秋在は小さく微笑む。 「お母さんの提案だったんだけど、当たり?」 「大当たりなんてモンじゃねェよッ! 秋在のお義母さん、マジで魔法使いだったんだなッ!」 「魔法、使い……?」  冬総の言っていることは、秋在には分からない。  だが、とても喜んでいる……ということだけは、分かった。  瞳を輝かせて、冬総はアルバムを眺める。  ――不意に、秋在が頬を膨らませた。 「……秋有にも興奮してたけど、フユフサって……ショタコンなの? 小さいボクの方が、好き?」 「ッ! ち、違うぞッ、断じてショタコンではないッ! 秋在なら小さくても大きくても好きだッ! ただ、過ぎ去りし秋在のレア度ってモンが――」 「小さいボクの写真……オカズに、されちゃうの?」 「可能性がゼロと言い切れないことは冗談に聞こえないんだぞ、秋在ッ! ……って、あぁッ! 違う、違うぞ、秋在ーッ!」  ――自分自身だというのに、思わずヤキモチを妬いてしまったなんて。  好きな人からショタコン疑惑をかけられた冬総は、秋在のいじらしい恋心に。  ……全く、気付かなかった。 7章【初体験アテンション】 了

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