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秋在の体が、冬総へ覆いかぶさるように倒れる。
その動きにすら、秋在は甘い声を漏らしていた。
しかし、冬総の目的はそこではない。
――倒れてきた、秋在の上半身だ。
「――ひあっ!」
突然、秋在が声を上げる。
「フ、フユフサ……っ! ウソ吐き、ひどい……あ、んっ!」
倒れてきた、秋在の上半身。
――目の前には、秋在の顔がある。
冬総は秋在の頬に、キスを落とした。
そのまま舌を這わせ、秋在を堪能する。
「や、だぁ……っ。触っちゃ、ダメ……ん、っ」
「触ってないぞ。舐めてるだけだ」
「そんなの、屁理屈――」
「秋在。……口、あーんってして」
冬総がなにをしたいのか、秋在は気付いていた。
しかし、目の前には冬総の顔。
そして……そんな冬総から、なにをされるのか分かっているのなら。
――秋在が選ぶ行動は、一つだけ。
「……あー、っ」
――秋在は素直に、口を開いた。
開かれた秋在の唇に、冬総は自身の唇を重ねる。
そのまま舌を入れ、秋在の口腔を弄ぶ。
「んっ、ふ……ん、んんっ!」
止めていた腰の動きを、冬総は再開する。
秋在はくぐもった声を漏らしたが、冬総の舌が秋在の舌を突き、それ以上の抵抗を阻止した。
「んっ、んん……っ、は、んぅ……っ!」
歯列をなぞり、上顎を舐める。
秋在の体は次第に、小刻みな震えを始めた。
――秋在の絶頂が、近い。
そう気付いた冬総は、どさくさに紛れて……秋在との約束を、破った。
「――んっ! んん、んぅ! ん、むぅ、っ!」
片手で、秋在の頭を押さえる。
そしてもう片方の手で、秋在の逸物を扱き始めたのだ。
限界を近くまで迎えていた秋在は、急所を刺激され。
「んんっ、ん、んぅう、っ!」
――呆気無く、射精した。
その拍子に、冬総も絶頂を迎える。
秋在のナカに精を吐き出し、そのまま深く……唇を、重ね続けた。
「ん……ふ、ぅ……っ」
次第に、秋在の体から力が抜けていく。
冬総が唇を離すと、二人の間に……透明の糸が引かれる。
「は、ぁ……あ、っ」
「秋在……すげェ、可愛い……ッ」
「フユ、フサぁ……っ」
秋在が、ふわりと微笑む。
まるで天使のような微笑みに、冬総も笑みで応える。
――次の瞬間。
「――本当に、自分の立場ってものが分かってないんだね……フユフサは」
「……え」
「極刑続行。今度は、口にガムテープと腕に縄だよ」
「え、秋在、ちょ……え、何でそんな物が枕の下に――あ、秋在、秋在ッ!」
その後。
冬総はガムテープの下で、何度も『ごめんなさい』と叫んだとか。
数時間後。
「――あの人、男が好きなんでしょ」
冬総の口からガムテープを外した秋在が、そう呟いた。
「あ、あぁ……そう、らしいぞ」
今度は腕の縄を解いてもらおうとした冬総は、秋在にそう答える。
秋在に背を向け、冬総は秋在に手首を向けた。
縄をほどいた秋在は、そのまま。
「――なのに『仲良くしてあげて』って、他の人ならもっと怒るよ」
冬総の背中に、抱き着いた。
それは、つまり。
(――俺が、秋在に浮気を薦めたって……そう、思ったのか?)
そんなつもり、勿論なかった。
いくら【男が好き】とはいえ、季龍の好みが秋在とは限らない。
しかし……確かに、話題の順番を考えると、そう思われてもおかしくなかったかもしれない、と。
「ごめん、秋在……ッ! そんなつもり、なかったんだけど……だけど、俺が悪かった……ッ!」
冬総は、軽率な発言を反省した。
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