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放課後の、教室に。
一人で残る生徒がいた。
その生徒は、クリーム色の瞳をノートへ向けている。
すると、その瞳が……動いた。
「――アキア君、お待たせ~!」
教室の扉が開け放たれると共に。
男子生徒が一人、教室へと入ってきたからだ。
教室に残っていた生徒――秋在は、男子生徒を見つめている。
クリーム色の瞳は、恋人へ向けるものとは違い……とても、寒々しい。
そんな視線を一身に受けている男子生徒――季龍は、秋在と違い……笑っている。
「まさか、机の中に手紙が入ってるなんて思わなかったから、ビックリしたわ~、マジで!」
そう言いながら秋在へ近付く季龍の手には、一枚のメモ帳が握られていた。
「ってか、アキア君ってオレの席憶えててくれたんだね~! オレ、手紙が入ってたことよりもそっちにビックリしたわ!」
わざとらしいほどに、季龍は嬉しそうだ。
一人はしゃぐ季龍の姿を、秋在は変わらず……冷めた目で見ている。
そして……ようやく、口を開いた。
「――春晴」
――瞳と同じく、冷たい声で。
「ボクは春晴。名前で呼ばないで」
秋在の言葉は、どこまでも冷え切っている。
それでも、季龍は笑みを消さなかった。
「やっと自己紹介してくれたなっ! 前はあんなに名前教えるの嫌がってたのにさ~! ……まっ、あらためて……よろしくってことで――」
「よろしくするために教えたんじゃない」
握手を求めようとした季龍を、秋在は見つめる。
「手切れ金の代わり」
――まるで、睨むように。
季龍は、手を引っ込める。
そしてそのまま……小さく、嘆息した。
「……はぁ。相変わらず、冬総以外には冷たいんだな~。……って、アレ? 冬総は? 一緒じゃないの?」
視線を秋在から逸らした季龍は、あることに気付く。
――冬総の席に、鞄がないのだ。
てっきり、秋在がいるのなら冬総もいると……季龍はそう、思っていた。
冬総がいないということは、この教室には秋在と季龍……二人だけ。
その状況は、さすがに予想していなかったのだ。
「必要無いから、先に帰らせた」
季龍はふと、昨日と今朝のことを思い出す。
――冬総と秋在は確か、喧嘩をしていた……と。
だからてっきり、帰りが別なのはそれが原因だと思った。
「へ~? それって、もしかしてケンカが続いて――」
「でも、今日だけ」
その考えを、秋在は一蹴する。
しかし、冬総がいないということは事実だ。
そして冬総がいない、ということは……秋在の隣の席は空いている、ということ。
立ち話もなんだと思った季龍は当然、冬総の席に座ろうとした。
しかし、季龍は秋在の行動を見て。
――動きを、止めた。
「――キミは今日、ボクが殺す」
――秋在が。
――なんの迷いもなく、一直線に。
――鉛筆の先端を、季龍に向けているのだから。
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