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秋在を抱き締めて、数分後。
「GPSの動きで、うちに向かってるのは分かってたけど……な、秋在? 学校に残って、なにしてたんだ?」
二人でベッドに座り、後ろから秋在の頬をムニムニと触りつつ。
冬総は、至極当然な疑問を口にした。
両手で顔を弄ばれながら、秋在は後ろに座る冬総へもたれかかっている。
「ん……っ。……寝てるときに、耳元で虫の羽音がしたら……五月蠅いと思わない?」
「え? ……まぁ、そう……だな? 夏とか、結構ストレスかも……」
「でしょ」
秋在は小さく笑って、冬総を見上げた。
「だから、羽を千切った」
「…………お、おう……?」
正直なところ。
秋在がなにをしていたのか、冬総には全く分からない。
しかし、秋在は嬉しそうに笑っている。
そして、こうして頬の弾力を楽しんでいても嫌がらない。
「……まぁ、秋在可愛いし、何でもいっか!」
そう言い、冬総は秋在の体を抱き締める。
「あぁ、秋在だ、秋在だ! ……くんくん!」
「ボクはずっとボクだよ。……わざとらしく『くんくん』って言わなくてもいいのに……んっ、くすぐったい……っ」
「秋在、いい匂いする。秋在って感じの匂いだ」
「だから、ボクはずっとボクで――や、だ……くすぐったい、ってば……っ」
秋在の首筋に顔を埋め、冬総がわざとらしく匂いを嗅ぐ。
そのこと自体は拒絶しないが、首筋に吐息がかかるのは良しとしないらしい。
秋在が、冬総の顔から逃れようと身をよじっている。
(ヤバイ。変な気分になってくる……)
秋在が吐息を漏らすと、冬総はすぐに反応してしまう。
このままでは話が脱線してしまうと気付いた冬総は、すぐさま秋在の首筋から顔を上げた。
「わり、変なスイッチ入りかけた。……でもよ? 最近の秋在、変だったろ? 俺が秋在不足になって変態みたいに匂いを嗅いでるのは、そもそも秋在が悪いんだからな? 昨日だって、全然触らせてくれなかったし……目の前に秋在がいるのに触らないとか、俺じゃないって。……はぁ、秋在だ……ッ」
「悪いのはボクを怒らせたフユフサなんだけど……」
「くんくん、すぅはぁ」
「わざと声に出すと、ヘンタイさんっぷりが増すよ、フユフサ……っ」
秋在はモゾモゾと身じろいでいるが、冬総はどうしたって離してあげようという気になれない。
「俺が悪かったのはちゃんと分かってるし、メチャクチャ反省したけどさ……だからって、秋在に触っちゃ駄目っていうのはズルいだろ? 俺は、秋在を愛でられないのが一番キツイんだぞ?」
「だからそういう刑にした」
「想定内だったか……」
冬総にとってなにが一番キツイお仕置きになるのか、秋在は知っていたらしい。
……そんなところにさえ胸をときめかせてしまうのだから、冬総は存外手遅れだが。
「秋在、ごめん。……変なスイッチ、全然切れない……。俺のこと把握しまくってる秋在とか、マジで可愛すぎ。……好きだよ、秋在」
「ん、っ」
「このまま抱きたいんだけど……今日も、いつもみたいに触るのは駄目……とか?」
秋在の耳を甘噛みして、冬総が囁く。
後ろには、冬総の硬くなっている逸物が当たっている。
秋在は冬総を見上げながら、呟いた。
「――もう、ブンブン飛んでないから……いいよ」
笑みを、浮かべながら。
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