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 ベッドの上で、並んで寝転がる。 「フユフサ、カッコ良かったよ」  たっぷりと愛された秋在は、冬総に擦り寄りながら、そう呟いた。  顔面騎乗位を望み、恋人の尻を舐め、あまつさえ内側を蹂躙し……。  そんな自分のどこがどう格好良く思ったのかが分からず、冬総は眉を寄せた。 「……どのあたりが?」 「今じゃなくて、ちょっと前」 「『ちょっと前』って……ン? いつだ?」  秋在の顔が、冬総の胸元へ擦り寄る。 「『不安要素は取り払う』って、言ってたの」  それは、今朝のやり取りだった。  改めて指摘されると、気恥ずかしい。  冬総は頬を掻いた。 「だからボクも、羽虫をプチッとした」 「……そっか」 「カッコ良すぎて、ちょっとだけ……ムカついたけど」  そこでようやく、合点がいく。 (あの時俺を睨んでたのは、そういうことだったのか)  てっきり、今朝の段階ではまだ怒っているのかと思っていた。  誤解が解けた冬総は、満足げに笑う。  そんなことに気付いていない秋在は、冬総に擦り寄ったまま呟いた。 「フユフサ、知ってる?」 「秋在のことなら何でも知ってるつもりだぞ」 「じゃあ、知ってるね。……ボクが浮気したら、フユフサは『浮気者』って言って、ボクを殺しに来ないとダメなんだよ」 「知らなかった……」  驚愕の事実に、冬総は出鼻をくじかれた気分だ。  小柄な恋人を抱き寄せ、冬総は思案する。 「うぅん……? でも、俺は秋在が死んだら生きていけないぞ。そうなったら、俺も後を追うしかないな。……でも、それは寂しい気がする」 「そうだね。どうせ一緒に死ぬなら、心中がいいかな……」 「そういう話じゃなくてだな……」  秋在の頭を撫でて、冬総は笑う。 「秋在がいないと俺は生きていけないから、もしも秋在が浮気したら……『浮気者』って言った後に、お前を閉じ込めるよ。俺以外に見向きもできないように、二人きりで生きていこう」 「……重い」 「あ、悪い……! 腕、重たかったか?」 「…………何でもない」  秋在に回していた腕を、冬総は慌てて引っ込める。  勿論、秋在が『重い』と言ったのは物理的な意味ではなかった。  が、無自覚の冬総にわざわざ指摘をするほど……秋在にとって伝えたい言葉ではない。  冬総の腕を引き、秋在は自身の体に回す。 「じゃあ、料理……頑張って、覚えてね」 「う……ッ! ……秋在の為なら、努力する……ッ」 「お米は洗剤で洗っちゃだめだよ? タマゴ、電子レンジでチンするのもだめ」 「それくらい分かってるっつの!」  秋在の頬を軽く引っ張り、冬総はわざとらしく怒りをアピールしてみた。  が、秋在を痛めつけることを良しとは思えない冬総は、すぐに秋在の頬を撫でる。 「……浮気、しないでくれよ? 俺には秋在だけなんだから、秋在もそうじゃないと困る……」 「うん。フユフサが浮気したら、ボクはフユフサを殺すけどね」 「な、えッ? 話が違うぞ……!」  力強く抱き締めると、秋在からも腕を回された。 (秋在とじゃれ合えることが、こんなにも嬉しいことだったなんてな……。喧嘩はしたくないけど、ある意味、感謝かもしれない……)  それでもヤッパリ、もう二度と喧嘩はしたくない。  そう思いながら、冬総は秋在の頬に口付ける。  そうすると、秋在が目を閉じたものだから。  今度は、唇にキスを落とした。 8章【合戦前エントロピー】 了

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