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季龍との激戦を終えた、その日の放課後。
『とまりにきて』
学校を休んでいた秋在から、そんなメッセージが送られてきた。
『準備したらすぐに向かうな』
冬総は一瞬の迷いも見せず、即座に返信をする。
どうしていきなり泊まりのお誘いをしてきたのか、なんて疑問は後回し。
冬総はバスに揺られながら、母親へのメッセージを打っていた。
(……よし、これでオッケーだな)
秋在の家に泊まるので、晩飯は要らない。
そういった主旨のメッセージを送った後、冬総はスマホをポケットにしまい込んだ。
(着替えと、手土産にお菓子でも持っていくか? ご家族用と、秋在と一緒に食べる用と……あとは……?)
バスを降り、駆け足気味に家へ向かう。
すぐさま自室で、泊まりの準備を始める。
買う物リストを脳内で作成しながら……ふと、冬総は動きを止めた。
「……コンドームは、どっちだ……?」
ポツリと、心の声が漏れ出る。
さすがに、ご家族がいる中で行為に及ぶのはハードルが高い。
しかし、秋在のことだ。
そういう気分になれば、きっと冬総を誘うだろう。
そのとき……もしも秋在の部屋にコンドームがなかったら、どうする。
「あぁぁ、でも……ッ! もしも秋在がその気じゃないのにコンドームを用意していたことがバレたら、軽蔑されるかもしれねェ……ッ!」
決して、そういうことを期待していないわけではない。
だが、期待しまくっているのかと問われれば……そういうわけでもないのだ。
冬総は自分のシャツに顔を埋めて、しばらく悶々とした後。
……スッ、と、立ち上がった。
「……ま、まぁ? 今日使わないにしても、いつかは使うしな、絶対」
そう結論付けて、冬総はコンビニでコンドームを調達しようと誓ったのだ。
春晴家の、前。
冬総がプレゼントした防寒具を装着した秋在が、外で冬総のことを待っていた。
何度見ても、自分がプレゼントしたもので埋まっている秋在は……可愛い。
ひっそりと胸キュンしながら、冬総は秋在に近寄った。
「悪い、待たせたか?」
「平気」
座り込んでいた秋在が、立ち上がる。
そんな秋在に、冬総はコンビニで調達した手土産を渡した。
「コレ、大したモンじゃないけど、ご家族に。……秋有くんにも」
「ありがと」
秋在は笑みを浮かべて、お菓子が入ったレジ袋を受け取る。
そしてそのまま春晴家に入り、秋在は冬総から受け取ったレジ袋をリビングのテーブルに置いた。
そして、テーブルの隅に置いてあるメモ用紙に『フユフサから』とだけ書き、レジ袋のそばに置く。
「夜になったら、お父さんたち帰ってくる。……その前に、仲良し……する?」
確かに、ご両親が帰ってきたら自重しなくてはいけない。
だが、かと言って家に着いた途端いきなり手を出すというのも……獣じみていて、冬総は気後れしてしまう。
夜に我慢するため、今すぐ抱いていしまうというのは……あまりにも節操無しな気がしてならない。
「う、うぅん……?」
目に見えて苦悩している冬総の手を、秋在は引いた。
そしてそのまま、自分が巻いているマフラーに触れさせる。
「夜は、静かに……ね?」
「……そういうの、どこで覚えてくるんだよ……ッ」
少なくとも、冬総は教えていない。
数ヶ月前までは処女だったはずの秋在も、今ではすっかり冬総を誘惑するプロだ。
秋在は小首を傾げて、冬総を見上げる。
「ボクとするの、イヤ? ……それとも、今日は仲良し……したく、ない……?」
「………………する」
結局。
冬総は、年頃の男なのだ。
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