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 秋在は潤んだ瞳で、冬総を見ている。  ……ちなみに。  余談ではあるが、秋在の瞳が潤んでいるのは情事の後だからだ。  それ以上の意味は、無い。  真っ直ぐで純粋な視線に耐えかねた冬総は、ヘラリと笑みを浮かべた。 「……秋在は怒るかもしんないけどさ。俺は、秋在から貰えるんだったら……正直、なんでも嬉しいんだよ。マジで」 「木彫りのクマでも? シカのツノが生えた、可愛くない男の子のご当地ぬいぐるみでも?」 「秋在が俺のために選んでくれたんなら、嬉しいに決まってるだろ?」  冬総の想像通り。 「……っ」  秋在は、ムッとした表情を浮かべた。  しかし、このイベントの主賓は冬総だ。 「……じゃあ。その【嬉しい】の中でも、上の方のものを教えて」  普段の秋在より、ほんの少し控えめに見える。  ふくれっ面を浮かべる秋在の頬を撫でて、冬総は笑った。 「しいて言うなら……そうやって、俺のために悩んでくれてる秋在、かな」  そのオプションがつくだけで、ご当地のなんとも言えないお土産や、使い道に困る要らないものだって……冬総にとっては家宝レベルの品に変わるだろう。  すると、やはり不満げな秋在は……。 「――いてッ!」  頬を撫でる冬総の手に、カプリと、噛みついた。 「秋在、痛いって……いてて、ッ」 「うーっ!」 「犬みたいに唸る秋在、だと……? レ、レアだ……ッ!」  冬総はすぐさま、写真を撮ろうとスマホを探す。  その動きに気付いた秋在は、瞬時に背を向けた。 (……残念だ、凄く)  けれど、秋在は本気で拗ねたわけではないだろう。  説明はできない確信を抱きながら、冬総は背を向ける秋在と距離を詰める。  そして、秋在のうなじに歯を立てた。 「……ん、っ」  ピクリ、と。  秋在が小さく、身じろぐ。 「……秋在。もう一回、シたい」  一糸纏わぬ秋在の姿を見て、冬総は性に多感な青少年らしく、欲望をぶつけた。  歯を立てたうなじに、冬総はそのまま舌を這わせる。 「……慣らさなくても、入ると……思う、けど」  拗ねたフリをし続けている秋在は、背を向けたまま小さく、返答した。 (顔見ながらシたかったんだけどな……)  ――やはり、ほんの少しだけ怒らせてしまったのかもしれない。  小さな罪悪感を抱きつつ、冬総は秋在の上半身に手を伸ばす。  平らな胸を手のひらで撫でると、秋在が小さく息を呑んだ。 (それでも、秋在相手だとすぐ興奮しちまう俺って……マジで、浅ましいよなァ……?)  そう思った冬総は、秋在の臀部に下半身を押しつけながら。 「秋在、好きだ。……挿れる、からな?」  そう囁き。  自嘲的に、笑ってしまった。

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