166 / 182

終章 : 6 *

 きっかけは、秋在の一言。 『思い出、つくりたいな……っ』  そう呟いたのが、始まりだった。 「あっ、は……ん、ぅ……っ」  机の上に、上体を預けて。  秋在は、冬総に後孔を蹂躙されていた。 「あぅ、う……んっ、や、っ!」  誰もいなくなった、放課後の教室。  思えば……ここが、全ての始まりだった。 「フユ、フサ……あ、っ! 奥、もっと……シてぇ、っ」  絵の具を、教室の床に撒き散らしていた……一人の、クラスメイト。  ――その姿が、あまりに強烈で。  ――そして、あまりにも……鮮烈だったから。 「んっ、あぁっ、あっ! らめっ、やぅ……っ! イ、っちゃう……っ!」  小柄で、穢れを知らなさそうな少年が。  今までいったい、どれほどの苦悩を抱えていたのか。  冬総にはまだ、理解しきれないだろう。 「秋在……ッ! 好きだ……ッ! 世界で一番、俺は秋在を愛してる……ッ!」 「ひあっ、ぁああ、っ!」  それと、同じように。  冬総がこれから、なにに対して怯え。  どう怒り、なぜ悲しみ、そして笑うのか。  秋在にもきっと、理解はできない。  どれだけ体を重ねても……冬総と秋在は一つになんか、なれやしない。  それでも、冬総は。 「……ッ! 秋在、ッ」  ――誰よりも、春晴秋在を愛している。  そして、秋在も。 「はぁ、あ……っ! フユフサぁ……っ」  ――誰よりも、夏形冬総を愛しているのだ。  教室の床が、秋在の精液によって白く汚れる。  内側に熱を注がれた秋在は、放心したように虚空を見つめていた。 「あ、ぅ……っ」  ゆっくりと、冬総が腰を引く。  その動きにさえ、秋在は体を震わせた。 「……なんか、罪悪感と背徳感がごちゃ混ぜになって……すげェ複雑な気分だ……ッ」 「気持ち良く、なかった……っ?」 「秋在のナカが気持ち良くないワケないだろ……? ……って、わざわざ言わせないでくれ、恥ずい……ッ」  机の上で脱力をしている秋在の身だしなみを整えながら、冬総は溜め息を吐く。 「はぁ……。秋在、いつの間にそんなエロくなったんだよ……? 俺の理性を自由自在に溶かせるようになって、楽しいか……? 小悪魔かよ、好きだ……ッ」 「フユフサ、時々なに言ってるのか……よく、分かんない……」 「俺が秋在に心底惚れてるってことだけ分かってくれたら、それでいいよ……」 「うん。知ってる」  秋在はそう答え、ゆっくりと背後を振り返った。 「……続きは、家で……シよ?」 「…………だから、どこでそういうの覚えてくるんだよマジで……ッ!」 「ごめん……イヤ、だった……?」 「はぁああメチャクチャに抱き潰したい」 「よかった」  帰り支度を進めて、冬総は秋在の頭を撫でる。  無邪気な子供のように、秋在は目を細めて。  冬総から与えられる愛情表現を、満足そうに受け入れた。

ともだちにシェアしよう!