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終章 : 13

 そうして迎えた、翌日の登校日。  手を繋いで登校していた秋在と冬総の横に、季龍が並んだ。 「おっはよ~、お二人さん! いや~、進級早々イチャイチャするんじゃね~よって感じなんだが~?」 「はよ、四川。……なんだよ、嫉妬は見苦しいぞ」 「じゃあ冬総は、俺が春晴くんの手を握っても嫉妬しないんだな~?」 「は? するに決まってんだろ、なに言ってんだ」 「ハハハッ、サッサと爆発しろ~」  そんな三人の横を、女子生徒が通り過ぎていく。 「おはよう、夏形くん!」 「同じクラスになったらよろしくね~!」 「おう。そんときは、よろしく」  女子生徒に軽く挨拶を返すと、秋在がわざとらしいふくれっ面を浮かべた。  が、そのことに気付いたのは季龍だけだったので……当然、閉口。  そのまま雑談を交わしつつ、三人はクラス替えの一覧が載っている広場へと向かう。 「え~っと、二年生の欄は……っと?」 「「…………」」 「いや、二人とも~? そんなガチガチに緊張することないんじゃ~……?」  クラス替えの表を眺めて、冬総と秋在はお互いの手を強く握っている。  その様子に内心で呆れつつ、季龍は指を指した。 「ホラ、こっちの欄だって。……う~ん? オレたちの名前は……?」  ゆっくりと、掲示板を眺める。  ――そして。 「――ま~、そうだよな! うんうん、知ってた知ってた!」  季龍が、呆れ返った様子で声を張り上げる。  ……と、同時に。 「――ィヨッシャァアアッ!」  冬総が、周りの目を気にすることなく、大声で叫んだ。  三人が見た、クラス替えの一覧。  ――そこには。  ――同じクラスに、三人の名前が書かれていた。  ガッツポーズをとっている冬総を見て、季龍は苦笑する。 「オイオイ、冬総~? もしかしてお前、入試合格より喜んでるんじゃないか~?」 「比にならねェってのッ!」 「お前らしいわ~」  季龍に返事をした後、冬総は隣に並ぶ秋在を見た。  秋在は、大きなクリーム色の瞳をパチパチと瞬かせている。 「秋在、秋在!」  そんな秋在の名前を呼び、冬総は満面の笑みを向けた。 「また一年、よろしくな!」  冬総からの、明るい声。  その声に対し、秋在は……。 「…………っ」  ムッと、不満そうな表情を浮かべた。  素早く手を解かれ、秋在がそのまま立ち去ってしまう。  愕然と、冬総は秋在の背中を眺めた。 「も、もしかして……秋在はヤッパリ、俺と一緒のクラスになりたくなかったのか……ッ?」 「いや、それはないだろ~?」 「ならどうして……ッ!」  天国から地獄へと急転直下した友人を見て。  季龍は不毛ながら、助け船を出す。 「あ~……浮かれまくって、失言したんじゃね? 例えば……今、冬総は【一年】って限定しただろ? それがイヤだったとか――」 「ハッ! あ、秋在ーッ! 違うッ、違うぞッ、秋在ーッ!」  そう叫びながら、冬総は秋在を追いかける。 「や~い! リア充爆発しろ~!」  慌ただしい二人を見て、周りの生徒は笑っていた。  秋在と冬総は、校内でも有名な恋人同士。  そんな二人がまた、同じクラスだというのなら……。  ――きっと、騒がしくも目まぐるしい一年が、始まるのだろう。  そんな予感を、季龍を含めた周りの生徒は……漠然と、抱いていたのだから。 終章【恋模様シーイング】 了

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