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そっと、冬総は自分の逸物を握った。
自慰行為をするなんて、いったいいつ振りか……。
秋在と付き合ってからは、そういった意味で困ったことはない。
(ほぼ毎日ヤッてたら、一人でする必要なんかないもんな)
再度、冬総はため息を吐く。
しかし、ここまできたのならば、もう引くことは許されない。
冬総は機械的な動きで、自身の逸物を上下に擦り始める。
……しかし、一向に勃つ気配がない。
秋在はスマホを向けたまま、ジッと冬総の痴態を眺めていた。
(一人で、って……どう、するんだっけ)
そっと、秋在のことを見つめてみる。
(俺のこんな姿を真剣に見てる秋在は可愛いが、この状況はあんまり興奮しないな……)
冬総には特段、特殊な性的嗜好がない。
恋人に痴態を見られて興奮するような性癖を、持ち合わせていないのだ。
(目を閉じて、秋在を抱いてるときのことでも思い出せば――)
すぐに、冬総は自分の考えを否定する。
(――目の前に本物の秋在がいるのに、妄想に逃げるのか?)
それは、秋在を愛する自分の生き様に反する行為だ。
冬総にはできないし、したくもなかった。
……となると、やはり秋在のことを見つめながら手を動かすしかない。
冬総は真剣な顔つきで、秋在のことを見つめた。
「……?」
秋在からすると、カメラに目線を向けられたような状況だ。困惑して当然だろう。
秋在が一瞬だけ眉を動かしたが、冬総はそんな秋在をジッと見つめていた。
そこでようやく、秋在は見られているのは【カメラ】ではなく【自分】だと気付く。
パチパチ、と。驚いた秋在は数回、瞳を瞬かせた。
「……秋在、かわい……ッ」
低く呻き、冬総は手を動かす。
すると、少しずつではあるが冬総の逸物が熱を持ち始めた。
「は、ッ。秋在に見られながらってのは、ちょっと恥ずいけど……秋在を見ながら抜くのは、贅沢かも……ッ」
ピクッ、と。
スマホを持つ秋在の指が、一瞬だけ跳ねる。
「今、指……跳ねた? ……照れてる秋在も、可愛いよ……ッ」
撮影されているのは、自分。
観察されているのも、自分のはず。
それでも冬総は、カメラのことがあまり気にならなくなっていた。
――本気で、秋在のことしか見ていないのだ。
「眉、寄ってるぞ。俺に言い当てられて、不満? それとも、恥ずかしい?」
「…………」
「喋んないのは、カメラに秋在の音が入るからか? ……じゃあ、俺が実況するよ。秋在は、黙ったままでいいから」
ぐちっ、と。淫猥な音が、冬総から鳴り始める。
「秋在、可愛い。耳、ちょっと赤くなってるな。じゃあ、怒ってるんじゃない。恥ずかしいんだ。……なんでだろうな。どう考えても、恥ずかしいことしてるのは俺なんだけど……」
「……っ」
「ハハッ。今、なにか反論しようとしただろ? ほんっと、マジで秋在可愛い……ッ」
冬総のこげ茶色の瞳が、しっかりと秋在を見つめていた。
「あー……なんか、最初は絶対無理だって思ってたんだけど、意外とできそう……ッ。……これ、普通に出していいのか? ……って、特殊な出し方とか、知らねェけど……」
ぐちぐちと、冬総が手を動かすたびに、先走りの液が逸物に擦り付けられる音が鳴る。
「出る、かも……ッ。でも、なんか……秋在のナカに、出したかったな……。もったいねェ……ッ」
「っ!」
独り言のように呟きながらも、冬総はずっと秋在のことを眺めていた。
だからこそ、冬総の『もったいない』発言に、秋在は動揺してしまったのだ。
「秋在、もう――」
冬総がそう、呟くと同時に。
「――フユフサ……っ」
秋在が、スマホを床に放った。
冬総の『もったいない』発言に、秋在が動揺した理由。
……それは。
――秋在自身も、そう思ったからだろう。
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