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確かめ合う土曜日
薄いカーテンに勝った日差しが、部屋の中を照らしてくるから、自然に目が覚める。
腕の中にしっかり収まって眠る司の頬に唇を寄せたら、んむんむと何かを呟いた司が、もぞもぞと抱きついてくる。
(……あー……)
幸せだなぁ、なんて。
やたらニヤつく唇の端を隠しもせずに、すり寄ってきた司を抱き締める。
こんな風に、ささやかなのに身体中を満たしてくれる幸せがあるなんて知らなかったと、苦い笑みを浮かべながら、ゆっくりと噛みしめる。
同時に湧き上がる欲望を宥めすかしながら、司の髪を撫でていれば。
「ぅ、ま?」
「ん?」
「そ、ま」
「ん。起こしちゃった?」
ごめんね、と呟きながら司の顔を覗き込んだら、眠たげに目をしょぼつかせた司が、たどたどしく言葉を紡ぐ。
「もう、あさ?」
「うん。でも、まだ8時とかじゃないかな?」
もうちょっと寝る?
そう聞いたら、ふにゃん、と頷いて、もぞもぞと体を動かした司が、オレの胸にぐりぐりと頭を擦りつけてくるのが可愛い。
「どしたの」
かわいいね、とからかうように笑って見せたら、眠たい目のままで唇を尖らせた司が、かわいいって言うなと、舌足らずに呟いて。
「そうまも、ねる?」
「んー……そうだね、どうしよっかな」
「ねよ、いっしょに」
「…………----ん」
ふわ、と。
いつもよりも幼くて、いつもよりも柔らかい笑顔がオレを誘惑する。
ごく、と喉が鳴ったのを、だけどたぶん、司は気付いていないから。
短く頷いて司の頭を撫でて何かを誤魔化しながら、安心しきってうっとり目を閉じた司の額に、堪らずに唇を寄せた。
「おやすみ、司」
「ぉにゃすみ」
「~~っ」
あくびの終わりに舌足らずに呟いて、すやすやと眠ってしまった司の可愛さに悶絶しながら。
どこか遠くへ行ってしまった眠気を探すこともせずに。
飽きることなく、司の寝顔を見つめ続けた。
結局、司が次に目を覚ましたのは、陽のすっかり昇りきった10時過ぎ。
ぽけぇっとしたままの司に朝だよと囁いたら、こくん、と頷いた司が、もぞもぞと体を起こして。
ぺたんとベッドの上に座り込んだままの体勢で、むにゃむにゃとおはようを呟いて、こしこしと目を擦っている。
(かわいいなぁ、ホントに)
まるで幼稚園児めいたその仕草に、自分の顔がテレテレと雪崩を起こしているのが分かって。
ぐ、と腕を上げて伸びをする服の裾から覗いた平べったいお腹と可愛いおへそに、頭が沸騰しそうになるのを、懸命に堪えた。
「朝ご飯しよっか」
「んー……」
「パンなら食べれる?」
「んー」
もぞもぞとベッドを降りた司が、またもや床にぺたりと座り込んだまま、振れたかどうかも分からないほど小さく頭を揺らして。
やれやれと愛おしく笑って、ぐりぐりと頭を撫でてやったら、食パンを魚焼きグリルに放り込む。電子レンジのトースト機能は、パンがべちゃつくから苦手なのだ。かといって、朝のパンのためだけにオーブントースターを買うほどの余裕はない。結局こたつを買ってしまったから、余計に。
冷蔵庫からマーガリンを取り出して、簡単な朝ご飯の準備を済ませて部屋に戻る。
寝てたりして、と心配したけれど、司もなんとか目を開けて待っていてくれた。
「さ、食べよう」
「んー」
寝癖のついた頭をさらりと撫でつけてやって、手にパンを持たせて。
いただきます、ともごもご呟いて、小さな一口をいつまでももぐもぐし続ける司に、他愛ない話を振っては、目が覚めるのを待った。
小さなもぐもぐでようやく半分食べ終えた頃に覚醒したらしい司が、ぬるくなったホットミルクをこくりと1口飲んだ後で、ようやくマトモに口をきいてくれる。
「そういえば、颯真って3連休、バイトは?」
「今日が昼からで、明日は朝だけ。そんで、明後日は1日休み」
「そっか」
「今日は一人にしちゃうけど……」
ごめんね、と付け足せば、ううん、と首を横に振って
「ごはん作って待ってる」
恥ずかしそうに笑った司の頭をぐりぐり撫でたら、自分の分の食器を下げて、洗い物をさっくり済ませてしまう。
残った半分を持て余し気味にもそもそ食べるのを辛抱強く見守りながら、出かける準備を始めた。
「冷蔵庫の中、何でも使って大丈夫だから」
「ん」
「それから」
「----颯真ってさ」
「お母さんだよ、どうせ。心配なの!」
「はーい」
寝間着代わりのジャージを脱ぎ捨てながら、思いつくままに投げた台詞を、司が呆れて笑うから。
ホントにもう、なんて怒って見せながら、もう一度頭をぐりぐりしてやる。くすぐったそうに首を竦めた司が、ようやく食パン1枚を食べきって、お行儀よく手を合わせるのを労う意味で、今度は優しく頭を叩いてやってから洗面所へ。
カチャカチャと食器を洗って片付ける音を聞きながら、身支度を調える間中。
鏡に映った自分の顔は、呆れるほど嬉しそうに笑っていた。
*****
ちゃんと鍵閉めてよ、と最後まで心配性の颯真の小言に、ハイハイと笑って。
行ってらっしゃいと見送ったら、新婚さんみたいだねと嬉しそうに呟いて唇を軽く触れあわせてから、弾むような足取りで出かけていった。
残されたこっちは、恥ずかしさのやり場も見つけられずに、赤くなった頬のままで鍵をかけて部屋に戻るしかなくて。
(ホントに気障ってゆーか、なんてゆーか……)
火照った頬に手を当てて冷ましながら、大して広くもない部屋の中で、所在なくベッドに腰を下ろす。
颯真がいないだけで、狭い1Kがガランとして広く思えるのが不思議で。
----淋しい、だなんて。
見送ったばかりなのにそんな風に感じて、慌てて頭を振る。
落ち込みかけた思考を振り払うように、使い慣れたレシピ本に手を伸ばしかけて。
(----出かけよっかな……)
ふとそんな風に思いついたのは、決して淋しいからじゃない、なんて言い切る自信はないけれど。
何度もお世話になったレシピ本は、目新しさにかける。
もちろん便利な世の中だから、スマホにレシピを教えてもらうことだって出来るけれど、何も思いつかない日にダラダラとスマホでレシピを検索してもピンとこない。レシピ本をパラパラめくって眺めている方が、これにしようあれにしようと決められる気がするから。
買い物の前に本屋に寄って、新しいレシピ本を買ってみよう。
そうしようと頷いて、持ってきていた鞄から適当に着替えを見繕ったら。
まるで寂しさから逃れるみたいに、そそくさと家を出た。
*****
「あれ、どうしたの。なんか今日、ご機嫌じゃない?」
「え? そうですか?」
「うん。なんか楽しそう」
「いつも通りですけどね」
「3連休の初日のバイトで、よくそんな楽しそうにやれるねぇ」
ゲンナリした様子で嘆く先輩に、首を傾げて笑いながら。
楽しそう、だなんて言われる要因は1つしかないと自覚しているから、照れ臭くなる。
出がけには、キスのおまけつき。
しかも、今日も帰れば待っていてくれるのだから。
嬉しくないなんて言ったら、バチが当たるし、楽しくないはずがない。
「あーあー、なんか楽しいことないかなぁー」
ぼやく先輩を尻目に、短い休憩を終えることにして。
「じゃあ、オレ先に戻りますね」
「んー、あたしもすぐ行くー」
気怠く手を振った先輩の声を背中に聞きながら、店内に戻った。
*****
そういえば颯真のバイト先がこの辺だったな、なんて。思ってふらりと足の向きを変えて。
エコバックを肩にぶら下げて帰る途中。
どこにでもあるコンビニの。
どこにでもある光景。
「……----っ」
楽しそうに喋る、男女の姿に胸が痛くなったのは、男の方が颯真だったからで。
女の人も、どこにでもいそうな、優しそうな人だったのが、余計に胸に刺さった。
お似合いにしか、見えなくて。付き合ってますと言われたら、きっと誰もが、やっぱり、なんて言いそうな。
そんな光景だった。
いつの間にか詰めていた息を、ことさらゆっくり吐き出したら、くるりと回れ右する。
(……関係ない。だって颯真はオレのこと好きって言ってたし、ただのバイト先の人だし、そもそも見た目がお似合いってだけで、別に付き合ってるとかじゃないんだし)
ぐるぐると取り留めのない思考が、頭だか胸だかを占拠していく。
ダメだ、切り替えなきゃ。
そう思っても、一度見てしまった2人の姿が、灼き付いて消えてくれない。
(----早く)
帰らなきゃ、と。逃げ出すように出てきたはずの淋しい場所へ、逃げ帰るみたいに足を動かして。
ドキドキと不安に高鳴る胸を抑えながら、颯真のくれた鍵を握りしめる。
そうだって。颯真は、これをくれたんだから。
たかが女の人と喋ってたってだけで、何揺らいでんの、と。自分を叱りつけながら。
----だけど、颯真は……ううん、オレだって。
別に男じゃなきゃ好きになれない訳じゃない。
いつか----もしかしたら。
違う誰かを好きになるかもしれない。違う誰かが、颯真を好きになってアプローチして。
可愛いオンナノコだったら、揺れるかもしれない。
綺麗なオネエサンだったら、フラっとなるかもしれない。
手が震えた。
そう、だって。
幸せで幸せで。いつまでだって続けばいいと思っていた。
壊れる日なんて、来ない、だなんて。
思っていた矢先に、オレは章悟を、失くしたのに。
どうしてあんなにも無防備に。
幸せに浸って、惚けていられたんだろう。
壊れるのなんて、一瞬のことなのに。
温かく包む腕も、柔らかく微笑う顔も、優しい声も。全部、一瞬で失くなったのに。
「----ッ」
呼吸、が。ずれる。
胸が痛くて苦しくて。
涙が滲むのを堪えられない。
もうダメだと、しゃがみ込みそうになった時だ。
ぎゅっと握った手の平の中で、かちゃん、と鍵が音を立てて、そっと目を開ける。
(……そうまの、かぎ……)
----そう。とにかく今は、これがあるから。
暗くなっていた視界にうっすらと光が戻ってきたら、いつのまにやら颯真のマンションの前だ。
ホッと息を吐いたら、逃げ込むみたいにマンションの入り口をくぐって、エレベーターを待たずに階段を駆け上がった。
*****
「ただいまー……って、あれ?」
バイトの疲れなんてなんのその。なんならスキップしながら帰れる、だなんて笑いながら浮かれて帰った家の中は。
おいしそうな匂いはかすかにしているものの、真っ暗だった。
「……司?」
どっか行ってるの? なんて。
自分でも驚くほどしょんぼりした声で呟いたら
「ん……そ、ま?」
小さな呟きと、もぞもぞと人が動く気配がして、パッと顔を上げる。
「司? いるの? 電気くらい付けなよ、真っ暗じゃん」
落ち込んでいた自分を振り払うように言葉を繰り出しながら、ポイポイッと靴を脱いで、狭い廊下を走って司の元へ。
パチンと電気を付けたら、ベッドの上にむっくりと起き上がって、こしこしと目を擦った眠たげな司の。
目が、腫れているような気がして、そっと歩み寄る。
「ただいま、司」
「おかえり」
にこりと。笑う目元に、涙の跡があった。
ぎゅっと胸が締め付けられるのは、涙の理由を想像したからだ。
(……まだ、忘れてない、よな……)
そりゃそうだ、と。納得したフリをして、痛い胸を押さえつけて、拗ねたいのを堪える。
涙には気付かなかったフリで、くしゃりと頭を撫でてやったら、くすぐったそうに首を竦めて、ホッとしたように笑った司が
「ごはん、できてるよ」
「ん、ありがとね」
「今日はね、あのね、初めて作ったやつなんだ」
「へー、そうなんだ。何なに? 楽しみ」
「ん。今あっためるね」
にこりと笑って、するりと脇を抜けてキッチンへ向かおうとするのが。
----酷く、淋しくて。
「司」
「え? ----っわ」
腕を引いて。よろめいた体を胸に抱き留めながら、ぎゅっと抱き締める。
寝起きの体は、いつもよりも少し体温が高くて、まるで小さな子供みたいで愛おしい。
「どしたの、颯真」
「ん、なんとなく……」
「?」
ちゅ、と。
目に入った首筋に唇を落としたら、ぴくん、と司の肩が跳ねた。
「そうま?」
目元を赤く染めて覗き込んできた司の。
おずおずと揺れた瞳に、ズキンと痛くなった中心が。抱き寄せていたせいで、意図せず司の腰の辺りに触れて。
「ぁ……ッ」
サッと頬を紅くした司が、ぇと、と。目をキョロキョロさせて戸惑うのが愛しくて可愛くて。
なのに、なんとなく。
章悟のこと想って泣いた後だから、こんなにオロオロしてるのかな、なんて。思ったら不意に。
凶悪なまでに凶暴な気持ちになって、気付けば深くて乱暴なキスで、司の唇を塞いでいて。
「ンッ……ッ、ん、そ、まッ」
上手く息継ぎが出来なかったらしい司が、くったりと胸に倒れ込んできているのに気付いてようやく、唇を離した。
「ごめ……」
「ううん。…………その……」
「ん?」
「……あの……」
「うん?」
「ぁ……の、ね……ぉれも、ね……あの……」
もごもごと口籠もって俯いていた司が、きゅっと。オレの服の裾を掴む。
「あの……おれ、も…………し、たい……」
「つかさ……」
きゅうっと。オレの服を掴んだ手に力が込められて。
呆然と名前を呼んだオレを、見上げてきたその目は。
羞恥に潤んでいるのか、それとも。
「…………さみし、かった……?」
「っ……」
へにゃ、と下がった口元は、何かを堪えようとして出来なかった時のそれに似ていて。
「もしかして……それで泣いてたの?」
「ッ」
ぼんっ、と。
真っ赤になった司の顔と。
あたふたと言い訳しようと口をパクパクさせる姿が。
可愛くて愛しくて。
(----あぁ……)
ヤバい。愛しすぎて、壊す。
そんな風に思いながら、さっきよりも優しくて、だけどさっきよりも深いキスで唇を塞ぐ。
「ふっ……ン……そ、まぁ」
「ん。ここにいるよ」
縋る手の平を強く握ってやりながら、潤んだ目をじっと見つめ返して。
「------------愛してるよ、司」
「ッ」
驚きに見張られた目が、
震えた唇が。
オレの口走った、----だけど自然に溢れ出たその台詞の衝撃を現しているみたいで、言ったオレまでも酷く混乱しながら。
でも、それ以外に表しようがない想いを、もう一度。
今度は、キスに込める。
「そ、ま……」
キスの合間に零れる司の声が、しっとりと濡れて、やけに艶めかしく聞こえ始めた頃。
脱ぎ散らかした服の上。固い床の上で抱き合いながら、顔を真っ赤に染めた司が、くい、とオレの頭を自分の方へ引き寄せて。
「ぉれも」
「ん?」
「……ぃ、……る」
「--------ん」
精一杯の小さな声が。
耳元で一生懸命に囁いてくれるその言葉が。
快感に変わって背中を駆けるから。
どうしようもないほどに切羽詰まったそこを、司に押しつけて。
「ッ、そっ……」
「ごめ、ちょっともう、待てない」
「っで、もッ」
「ごめん、汚す」
「----ぇ?」
既に同じように熱くなっていた司のと一緒に握り込んで、強く上下に擦り上げる。
「ゃっ……まっ、てッ」
「むり」
「ンンンッ」
悲鳴じみた抗議の声を唇で塞いだら、2人してあっさりと、白濁を司の腹の上に吐き出した。
*****
お腹の上に飛び散った生暖かさに、呆然と颯真を見上げたら、あぁ、と呻くように呟いた颯真が。
獣みたいにギラついた目でオレを見つめて、唇の端をきゅっと上げる。
「ヤバい、めちゃくちゃエロイ」
「ッ」
今までに見たことがないほどに肉食獣めいたその表情が。
少し恐いくせに、ゾクゾクと体の中を駆け巡る快感に操られて、蕩けきった溜め息が零れるのを抑えきれずに。
「そうま」
「ごめん。もう、とまんない」
「ンぁ」
首筋に噛みついてくる颯真に、ぴくりと体が跳ねる。
(----あぁ……)
こんなにも。
こんなにも愛されて、何を不安に思うことがあったのか。
安堵が、身体中の力を抜いたら
「そぅまぁ」
全身全霊で甘えて強請る媚びた声が唇から零れて。
驚いていた颯真の目が、優しく細められた後に、ケダモノの目をした颯真が、その唇から余裕のない声を出した。
「煽ったの、確実に司だから」
恨まないでね、と。
笑う声が忠告するのを、構うものかと思った自分も、きっと箍が外れている。
「そ、ぅまッ」
さっき出したばかりなのにもう熱く反り返った自分自身を、縋り付いた颯真の腰の辺りに押し当てて、熱い息を吐き出す。
負けじと押しつけられた颯真のそれも、既に熱くなってオレを煽ってくる。
しがみつくみたいに背中に腕を回して、盛りのついたドーブツみたいに腰をぎゅうぎゅう押しつけていたら、切羽詰まった声で呻いた颯真が、貪るみたいに唇を塞いできた。
いつもよりも乱暴な指先で後ろを拓かれてるのに。
痛くないどころか、誘うように内(なか)が蠢くのが分かって。
それを恥ずかしいと思う余裕すら。
与えられずに押し込まれた熱量。
「ぅあぁぁっ----ッァぁ」
泣き叫ぶみたいな声が漏れたのに。
身体中を満たす颯真の熱に煽られて。
訳も分からずに噎び泣きながら、颯真の唇を必死で吸う。
「つかさッ……つかさ、司ッ」
悲鳴みたいな声でオレを呼ぶ颯真が。
愛しくて仕方なくて。
奥の奥までこじ開けられて上げるはずだった悲鳴は、颯真の肩に噛みつくことで危うく危うく堪えた。
「ッぅ」
呻いた颯真にハッとして顔を上げたら、ニヤリと笑った颯真と目があって。
「ごめっ……いたかった?」
揺さぶられながら聞いたその言葉に、颯真が笑ってくれる。
「いいよ。大丈夫だから、もっとつけてよ」
「そうま?」
「いいよ。司のだってシルシ。もっとつけてよ」
「そうま……」
「オレも、つけるから」
「ッア」
奥を突き上げられるのと一緒に与えられた、チクンとした一瞬の、だけど確かな痛みに。
酷く興奮した。
仕返しとばかりに、胸に、肩に、腕に。
目についた所へ唇を寄せながら。
同じように刻まれていく愛の証を、うっとりと受け止めた。
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