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香る一夜

斎藤は行くことも出来ず戻ることも出来ず、さてどうしたものかと手持ち無沙汰でしおりをひらひらと振ってみる。 ふわりと花の香りがしたような気がして、しおりに顔を近づけ鼻を鳴らした。 かすかにだが、押し花の花の香りがする。 前からすうっと風が斎藤に向かって吹いてきたのを斎藤がしおりから顔を上げて風の方向を見ると。 確かにさっきまではなかった細い道が自動販売機とマンションの間にできていた。 思わず目を擦る。 一度見て、また目を擦る。 恐る恐る目を開けて見てもやはり道はあった。 しおりを胸ポケットにしまい込むと斎藤は導かれるようにその細い道に入っていった。

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