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香る一夜
………………………………………………………長い。
暗い細道を歩き続けている斎藤はその長くどこまでも続きそうな道を前にため息をついた。
入ってきてしまったのが間違いだったか。
あのまま来た道を引き返して駅に戻れば良かったのかもしれない。
だが。
何故かどうしてもその店を訪ねてみたかった。
これほど興味が湧いたことすら久しぶりだ。
明日が休みだからだ。
斎藤はまたゆっくりと歩き出しながら無理矢理に理由をつけてまだ見ぬその店に思いを馳せた。
まだまだ続くと思っていた道がいきなり終わったと理解すると同時に目の前にぼんやりと光る店が一軒表れた。
明るすぎず、暗すぎず、ぼんやりと灯りの灯った店。
看板もなく、何の店かすらわからない。
だが、訪ねてきたのはこの店だと斎藤は思い、店には不釣り合いなドアの横にある呼び鈴を鳴らした。
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