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迷う二夜
自動販売機の灯りを睨みつけながら斎藤は大きく深いため息をついた。
もうこれで五週連続か。
あれから毎週金曜日の夜、斎藤は紫音の店を訪れようとしているのだが、いつも自動販売機が三台並び、すぐ隣にはマンションがあるだけで、あの細長い道は現れてこない。
三回目に振られた後、バーに行き、愚痴がてらマスターに話してみるとマスターは肩を揺らしながら笑った後、からかうような口調で言った。
「迷いがあるからなんじゃないですか?」
そんなことはない。
あれから誰ともベッドを共にしてないし、
思い出すのは紫音のことばかりだった。
恋人がいない時、好みのタイプから誘われれば気軽に一夜を過ごしていたし、
気が向けば自分から誘ったりもしていたのに、
紫音と出会ってからそんな気は全く起きなくなっていた。
背広の胸ポケットからしおりを取り出すとそっと唇をつけた。
迷いか。
そうかもしれないな。
マスターの言葉を思い出し斎藤は苦笑いを零した。
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