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迷う二夜

「俺を好き?紫音」 唇のすぐ横にキスをしてから紫音が答え易いように顔を見ずに耳元に囁く。 そのまま耳元に唇を押し当て首筋に降ろしながらそっと舌を這わせると紫音の肩がびくんと上がった。 「す、好きじゃない……」 絞り出すように聞こえた声に斎藤が笑う。 「好きじゃないってことは嫌いってこと?」 「………嫌い」 「嫌いなヤツに抱き締められてていいの?」 「我慢、してあげます」 拗ねたような声に斎藤がまた笑った。 「……どこまで我慢してくれる?」 急に欲情を含んだ斎藤の声と吐息に紫音が思わず顔を上げると斎藤が顔を下げさせないように顎を捕まえた。 「紫音が泣いて縋っても俺が満足するまで我慢してくれる?」 嫌だと手を振りほどけばこの人はそれ以上無理強いはしないだろう。 温かく優しいこの腕が手が自分の身体を愛しいと這い撫でる感覚が思い出される。 口先でどれほど意地を張ってみたところで、もうこの人には全てみ破られている。 きっとこれから触れられる身体でも上がる声でも表情でも、想い慕っていると告げてしまう。 それから先があるのだろうか。 不安で怖い。 それでも、欲しい。 この人が欲しい。 「どこまで我慢出来るか、試してみたらいかがですか」 紫音は精一杯の強がりを顔に貼り付け斎藤に微笑んでみせた。 ――

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