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蘇る四夜

紫音の朝は庭から始まる。 一年365日それを一日たりとも欠かさない。 雨が続く日は水をやらず、ただ座り花木を見る。 今の時期はポットマムやジニア、秋明菊が競うように咲き、コスモスもしばらくすれば開きそうだ。 金木犀の甘い匂いに酔えるのももうすぐか。 みなこ先生が遺してくれた大切な場所。 家の改築をする際、この庭だけはそのまま残したい、そう言った紫音を明義は嬉しそうに抱き締めてくれた。 どのくらい庭を眺めていたのか。 部屋の時計に目をやり、そしてドライフラワーになってしまったチューリップを見て思い出す。 これも最近の日課になってしまった。 紫音はドライフラワーが苦手だった。生きている花が好きだ。 物を言わぬ花が懸命に開き華やかさを香りを纏うような様が好きだった。 枯れ、生気のないドライフラワーには何の興味もなかった。 何度も水切りをして長い間耐えるように咲いてくれたチューリップ。 それでも一日一日と花弁を落としていくのを唇を噛んで見つめた。 もらった時は開きかけだった最後の一輪をドライフラワーにしたのはあの男への執着のようにも思えて紫音は苦笑いしながらもそれを部屋に飾った。 あれから水曜日の男はぴたりと現れなくなった。 水曜日も他の曜日にも全く姿を現さない。 やはり望んだからだ。 紫音はまた唇を固く噛み締めた。

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