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第3話

澄は「嘘くせえ」と肩をすくめた。 テレビで観た霊能力者のほとんどは、ヤラセの嘘つきだった。知り合いから紹介された占い師を訪ねてみたこともあるが、かれらは狐や蛇の霊に取り憑かれていた。まるで動物の霊たちに遊ばれているようだった。 ケンジは「夜神先生は本物だ」と真剣な顔で言った。 「それに、夜神先生の助手を探してるのは、アンセルフィッシュの(がん)さんだ」 その言葉を聞いて、澄は「雁さんが……」とつぶやいた。 アンセルフィッシュは、この辺りを仕切っている自警組織だ。喧嘩も多く、軽犯罪にも手を出しやすい若者たちが、トラブルを起こすとすぐに駆けつけて、仲裁する。トラブルバスターとして尊敬されており、中でもリーダーの雁は、澄のような新参者にも知られていた。 「澄、正直、オレはお前の面倒見切れるとは思えねえ。お前は、酒もタバコもヤクも女もやらねえ。シラフのきれいな経歴だ。だけど、破滅の匂いがする」 ケンジは真面目な顔で言った。ヒトシが「そうっすか……? オレのほうが……」といぶかしげな顔をしている。 「ヒトシ、お前はこの街にいればなんとかやっていける。だけど、澄はな、たぶん違うんだ」 そう言いながら、ケンジは「お前のこと、雁さんに頼どくわ」とスマホを出して早速メッセを送り始めた。 澄は「そうっすか」と言うと、また「ははは」と笑った。 翌週、さっそく澄は呼び出された。指定された駅の前のベンチに座って、足をブラブラさせていると、長身に白いスーツを身にまとい、サングラスをかけた男が現れた。スマホが震えたのでロックを開けるとメッセか届いていた。 「君が澄か?」 短い文章を読んで顔を上げると、スーツの男は、サングラスを外した。 雁を昼間の明るいところで見るのは初めてだった。前髪を後ろになでつけ、形の良い額があらわになっている。彫りの深い顔立ちに、きりりとした眉。強いまなざしが印象的だった。 「君、霊感があるんだって?」 単刀直入に聞かれて「はあ、まあ……」と、澄は答えを濁した。 「嘘だったら、今ここで教えてくれ。これまで、助手志望者を何度も連れて行ったが、2人は冗談のつもりだったと言い、3人は霊感があるというのは思い込みだった。これ以上、夜神先生のお手間を取らせたくない。頼み込んで、やっとうちの人材から助手を雇ってもらえることになったんだからな」 キビキビとした口調で言われて、澄は「話が違う」と思う。 「夜神先生が助手を探してるんじゃないですか?」 「いや、そうじゃない。アンセルフィッシュに、ゴーストバスターズを作るのが最終的な目標だ。その第一段階で、うちの若手から研修に行ってもらう」 「はあ? ゴーストバスターズ?」 「ああ、怪奇現象処理班だ。君も知っているか? 夜の街には、魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめいている」 澄は「それは、まあ、知ってますけど」とボソボソ言うと、雁が目を見開いて「君は見えるのか?!奴らが?!」と肩を掴んで叫ぶ。 「逸材だ……。君を先生に紹介しよう」 雁の頬は紅潮し、目は潤んで感極まっているようだった。

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