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第27話
「あっ……」
やがてリョータの中心をさすり、同時に自分のものもアピールするように太ももへ押しつけると目を見開いた。そんな反応が面白くて、ついしつこくしてしまう。
「シオリさん、オヤジくせえ……」
「上等だな。お前相手なら、いつまででもセクハラオヤジになれそうだ」
リョータの尻を引き寄せて揉みしだき、その手を滑らせて中心にも手を伸ばす。制服のスラックスをくつろげるときだけはさすがに罪悪感が頭をもたげたが、かつてない己の欲望には勝てない。
直に手を入れるとリョータのそれはすでに先走りで濡れそぼっていた。やさしく握り込み上下にするだけで、リョータの息が上がる。
「あっ……い、……」
「いけよ。たっぷり出していいぞ」
慣れない刺激にあっという間にリョータは達してしまった。ドクドクと白濁を放つ間も唇を絡め、口内を蹂躙する。もうリョータの抵抗もなくなって、再び首筋へ唇を這わす頃には身体からくったりと力が抜けた。抱き寄せる肩が弛緩して頭がだらりと下がる。かと思えば仰け反る喉に煽られ、ゴクンと息を飲んだ。
「ああっ……う、……んっ……」
潤滑剤を纏わせた指で中を解す。苦しそうな息づかいに甘さが入るまで丁寧に慣らしても、いざとなると怯んでしまう。
今すぐにでも中に入りたいのに、躊躇する気持ちもずっと残っている。きっと遠い過去、初めてのあの時もそうだったのではないか。急に怖じ気づきそうな自分がいる。
それでもなんとか腹を決めて、コンドームを装着するために己自身を取り出す。リョータはそこを凝視して「……凶悪だ」とつぶやいたきり黙り込んでしまった。
「今日はここまでにしておくか?」
「……それは嫌だ。痛くても…………我慢できる」
そんなの、余計動きづらいわ。しかしその後に及んで躊躇うなど、今までのシオリには考えられなかったことだ。
「断る間もないくらい、強引にきてくれよ。いつもみたいに」
「…………え?」
首に絡めた腕で引き寄せられ、陰部を握られる。これ以上ないくらいの昂ぶりをみせている怒張は、ぐわんとその鎌首をもたげた。
「ほんっと……凶悪」
ふっと笑みをこぼすリョータがのぞかせた艶めかしさは、十代の男子とは思えない。理性の糸が切れる音を、初めて聞いた気がした。
「……は、いった? シオリさん」
「ん……もうちょっとだ。苦しいか?」
「…………大丈夫」
口とは裏腹に、苦痛の表情が浮かぶ、だが思わず身体を引こうとすると、リョータの手に阻まれる。
「やめないで、ください……このまま……おねがい」
先程までの年増のような貫禄は消え、いつものリョータだ。視線に切実な思いがこもっている。まぶたにそっと口づけて腰を持ち上げる。シオリは覚悟を決めて己のものを奥に進めた。
「う……あっ……」
苦しそうな声ごと包み込むように、リョータの頭を片手で抱え、自分の胸に抱き込んだ。好きな相手のシオリから抱きしめられても身体を硬くしていたリョータが、いつのまにかシオリの体温に慣れてくれた。遠慮がちに伸びた手がやがてぎゅっとシオリの肩を掴む。素直な反応に愛おしさがあふれてきた。
そもそもタイプではなかったはず。
ましてや高校生に手を出すような馬鹿なまねをしてまで、リョータに惹かれる理由はまだわからないけれど、リョータを誰にも渡したくないし、触れさせたくない。できるなら、自分ひとりのものにして永遠に閉じ込めてしまいたいくらい、こだわっている。
ここまで誰かに強く執着したことはなかった。リョータの奥に押し入るごとに、その気持ちは強くなってゆく。
「……ん」
「全部……はいった?」
確かめるように頭を少しあげたリョータが、切れ切れの声で聞いてくる。
「うん……お前ん中に全部入ったよ」
リョータは感慨深げにふっと笑みをこぼすと、目を閉じた。はあと大きく息をついたのでさらに奥深く中を穿つ。
喜びと共に胸の奥がぎゅっと苦しくなる、不思議な感覚だった。はじめてリョータを抱いたのに、懐かしいような、待ち焦がれていたような気持ちになる。
「シオリ……さん?」
名前を呼ばれて我にかえると、眼下にはリョータの驚いた顔。その頬がうっすらと濡れている。
「……大丈夫ですか?」
「なにがだよ」
大丈夫かどうか心配されなくちゃいけないのは、シオリじゃなくてリョータだ。だが、リョータの指先がシオリのまなじりをとらえ、すっと拭われる。そこでやっと、シオリは自分が涙を流していることに気付いた。
リョータの頬を濡らしていたものが自分の涙だとわかって動揺する。追い打ちをかけるように嗚咽が止まらなくなった。
「し……シオリさん! あ、やっ……苦し……」
心と体がめちゃくちゃな方向に向いて大混乱している。初めてだからと、いたわりながら大切に抱くつもりだったのに、実際は泣きながらリョータの中に打ち付けている。ひどいことをしている自覚はあるが、止まらない。
リョータは苦しそうにしながらも、シオリの頭部をそっと抱き寄せた。まるでシオリがこんな醜態をさらすことも、なにもかも知っていたかのようにすべてを受け入れてくれている。
「うっ……く……」
嗚咽が止まらないのは悲しいからじゃない。混乱する多数の感情が絡み合って太い糸になった時、残ったのはやはり歓喜だった。リョータの中にいることで、なにかが甦る。この多幸感をずっと前から知っている。
「シオリさん……」
囁く声はシオリの胸のずっと奥に染み入る。
「リョータ! リョータ、リョータ…………」
「ん……」
「――兄さん」
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