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第2話(1)
「どうしたものか……」
目の前にいる王国の主は深いため息をつく。
「このままではこの国まで瘴気が広がり民にも影響を及ぼしかねません。王様、どうか御判断を。」
「ふむ…。やむを得ないな、女神の召喚を許可する。」
「指揮はアスランに任せる。補佐はお前に任せよう、レオンハルト。」
レオンハルト・シュバルツそれが私の名前だ。王国魔道具技師団と呼ばれる王国お抱えの魔道具技術師集団の団長を務めている。
「かしこまりました。」
「ありがとうございます陛下。女神様は我々が責任を持ってお迎えいたします。」
アスラン王子が真剣な表情で答える。
「うむ。頼んだぞ。」
王子と共に謁見の間を後にする。
廊下で王子が私に問いかける。
「レオンハルトよ、女神様の伝承を知っているな?」
「はい。伝承では『悪魔によって世界に広められた邪悪な瘴気を王国が召喚した女神によって清め払われた』と」
古くからこの王国に伝わる伝承だ。
かつて大きな魔力の歪みによって生まれた悪魔と呼ばれる存在が、国中を瘴気という黒い霧で覆い、国民は原因不明の伝染病や突然死に襲われた。
それを止めたのが女神と呼ばれる存在だった。女神は女神と呼ばれながらも男であり、強力な神聖魔力を秘めていた。
女神はその力を使い、瘴気を払い再びこの国に安寧をもたらしたのだ。
そして現在この王国で瘴気が発生したのだ。
すでに何人か原因不明の病にかかり危ない状況の国民もいる。このままではこの国は滅んでしまう。
「そうだ、だが女神様を本当に召喚できるとは限らない。だから万が一に備え、瘴気を女神様に頼ることなく消す方法も考えておかなければならない。」
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