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第4話(3)
「おお、参られましたか。昨日は女神様のお弟子様にご挨拶ができ無かった無礼をお許し下さい。」
「い、いえ!王様…!」
俺は王様に挨拶しに来た。
王様が謝っているのは、昨日は皆んなして女神様女神様って俺を忘れて放置していたことを言ってるんだろう。
「しかし貴女様も召喚に応じて参られた女神のお弟子様でいらっしゃる。女神様と共に瘴気を払ってくれるのでしょう?女神様の世界から2人も参られるなんて、やはりこの国の瘴気はそれだけ深刻だということか……」
「は、ははは…」
俺は先程の受川との会話を思い出す。
「多分俺達、BLゲーの世界に来た。」
「…は?」
何言ってんだコイツと言った顔で受川を見る。
しかし受川の顔は真剣そのものだ。
「だから、俺がやってた『ビエルン王国と女神の奇跡』っていうゲームの世界に来たんだって!」
「ここに来る直前、俺たち道で酔っ払いながら星にこのゲームの世界に行くってお願いしただろ?きっとそれが今現実に叶ったんだよ!間違いない!」
受川は興奮気味に話し出す。
受川によると、『ビエルン王国と女神の奇跡』というタイトルの恋愛趣味レーションゲームに俺たちは飛ばされてしまったのだと言う。
内容は異世界に飛ばされた主人公は、異世界では女神として召喚され、攻略対象達とこの国に迫る悪魔と呼ばれる敵から国を救い、最後には攻略対象と結ばれるのだという。
「んで、俺たちはゲームのシナリオ通り、女神として召喚されたってわけ!証拠にほら!俺ちゃんと魔法使えるの!」
受川は手から白い光を出すと、俺の肩にその手を当てる。
「うお!なになに?怖い!」
ビクビクとしながら受川が手を退かすのを待つ
「どう??肩軽くない??!」
「え……あれ?」
たしかにデスクワークで凝っていた肩が軽い。
「肩が軽い…?」
「これが女神の力の持つ神聖魔法だ!肩こりや腰痛にも効くぞ!」
何だその新しい整体療法は。
「何だよ?袖になんかライトかなんか仕込んでるんだろ?出せ!」
受川の裾を掴むと急に視界が高くなった。
高くなった?下を見ると足が地面から離れている。
「う、浮いてる!?!」
「猫目様。例えお弟子様であろうと振る舞いが少々失礼ではありませんか?」
アスラン王子がそっと手を降ろすのに合わせて俺も下に降ろされる。
「今のもま、魔法…?」
そうだ、と受川が頷く。
今のは流石に手品とも思えないし、俺たちのいた世界とは違うみたいだし、受川の言っていることは本当なのかもしれない…。
「女神は回復魔法と浄化魔法が使えるんだぞ!多分お前も召喚されてるし使えるって!」
「え?!俺も今の使えるの?!どうやるんだ?!」
と、ここまで思い出していると、国王が俺に問いかけてくる。
「して、お弟子様も神聖魔力をお持ちだと女神様から聞いております。どれ程のものか、見せていただいても?」
その問いに一気に現実に戻される。
「あ、あの〜そのですね〜〜……」
なんとも答えにくい。どうしたものか。ていうかこれ受川も披露したのか?クッソ、ハードル上げやがって。
「?どうなさったかな?」
「あ、いえその……」
ええい、もう一度やってみなきゃわからんだろ!!!
もう一度、そう、もう一度。
さっきの受川の前でも魔法を試してみたのだ。
だが結果は――
「えい!」
情けない声と同時にスカッと手から一瞬光ったようにも見えたが、特にこれと言って変化はなかった。
「え、えへ…ごめんなさい王様…」
冷や汗をかきながら王様を恐る恐る見つめる。
「ボク、魔法使エナイミタイ……」
言葉を放った瞬間、空気が一瞬にして凍りついたことは言うまでもない。
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