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第7話(1)

「もー!無理!よくわかんない!魔法出ないし!」 身体を芝生の生えた地面に倒し、駄々をこねる。 「そんなこと言わずに頑張りましょうよ!ね?海斗様はとっても筋が良いですし、もう少し努力したらきっと魔法も出る筈ですよー」 そう爽やかに俺を励ます彼の名前は、イアン・マックウェル。 イアンは手を伸ばして俺の腕を引き、身体を起こしてくれた。 「さあもう一度やってみましょう!レオンハルトさんに笑われてしまいますよ!」 レオンハルトという名前に一瞬ドキっとした。いやいや、忘れよう。しょうがない、もう一度やるか。 「魔法を使う時は使う魔法のイメージをするのです。そしてそのまま念じてみて」 俺はレオンハルトとの雑念が残ったままだったが、言われた通り、手を前に伸ばし、受川が以前使っていた白い光をイメージする。 俺は言われた通り、手を前に伸ばし、受川が以前使っていた白い光をイメージする。 「出よ!光!!!」 気合いを入れて念じてみる。 すると手からぼやっと鈍い光が一瞬だけ出た。 「あ!!で、出た!!!?!今光ったよね??!」 「はい出ましたね!薄く鈍い光がたしかに出てました!一瞬ですけど!」 レオンハルトから紹介された時は、なんだか気まずいような感じもしたが、彼は熱心にすぐに諦める俺を何度も励まして魔法の使い方を教えてくれた。 俺はつい、感無量といった気持ちでイアンに抱きつく。 「わーい!きっと特訓の成果だ!ありがとうイアン先生!」 「あはは、これはこれは甘えん坊な生徒ですね。」 一緒に笑いながら優しく俺の頭を撫でてくれる。 「ではこれを今度はもっと強い光が出る様に訓練していきましょうね?」 イアンは爽やかだけど言うことやることは中々スパルタだ。 「スパルタ過ぎでしょ!」 かれこれこの世界に来て2週間は経ったが、まだまだ魔法はあまり使いこなせていない。今日やっと成果がちょっとだけ出てきただけだ。 イアンが言うには2〜3日程度でできるようになると言うことだったが、この有様である。だがイアンはよく俺を出来る子と褒めてくれるので俺も流石に頑張らねばとは思っている。 「では海斗様、そろそろ研究室の方に戻りましょうか。お疲れ様でした!」 イアンは栗色の髪に緑色のぱっちりとした瞳に爽やかな笑顔がなかなかに可愛らしいイケメンだ。なかなか馴染めずにいた俺を名前で呼んでくれたり、気遣いもしてくれる好青年だ。そんな愛嬌の良さからか男女問わず好かれている。 「イアンは誰かと付き合ってたりしないの?彼女とかは?」 「え?ああ、いえそんな!ボクには恋人なんてできませんよ!」 「えー?またまたぁ?どうせ1人くらい居るんだろー?」 イアンは年下なのでついからかってしまう。イアンは顔を赤らめて焦っている。うんうん、可愛い。 「か、からかわないでくださいよ…それにボクは……」 イアンが何か言いかけていたところで、前からレオンハルトが通って来るのが見えた。 「あ、レオンハルト…」 「どうも」 あれから顔を合わせるたびに気まずい雰囲気になってしまう。そりゃそうだ、BLゲーといえども貞操観念の強いこの世界で、しかもノンケに2回も身体を触らせ、付き合ってもないのに挿入までさせようとしたのだから避けられても当然だろう。 「今日もあの研究室借りるよ」 「もうあそこは猫目様の為にご用意した研究室ですので自由にお使いください。」 「う、うん…」 気まずい雰囲気を察してくれたのか、イアンが割って入る。 「そうだ!海斗様、良かったら海斗様の研究室見せてくれませんか?ボク、海斗様が何を研究なさってるのかとても気になっていたんです」 「え?ああ!ダメダメ!あそこは以外立ち入り禁止だから!ははは!」 イアンが話題を変えてくれて俺も調子を戻す。そして国王が用意してくれた俺の研究室は俺と許された者以外は入ってはいけないようにしている。 ふとレオンハルトと目が合う。レオンハルトが何故かこちらを睨んでいる。早く行けってことか? 「そう言っていつも海斗様は教えてくださらないじゃないですかー」 「…仲がよろしいんですね。」 レオンハルトが俺をなんだか不機嫌そうに見ている。なんだ?騒がしかったかな。 「あははー毎日訓練してもらってるから仲良くはなるよねー!まあ、そういうことだからイアンまた明日も魔法の訓練よろしくね!じゃ!」 「あっええ…はい」 困ったような笑顔で手を振るイアンの横でレオンハルトの刺すような視線がなんだか怖いのでさっさと研究室へと入る。 「ふう…さて、やりますか」 気持ちを切り替えて作業に取り掛かる。俺はこの2週間、この世界の素材や特産品、工業品などを調べ上げ、試作品第一号を作り上げた。 「ふっふっふっ。俺の処女作、試作品第一号、お手製ディルドちゃん!!!」 俺はあれからせっせと大人のオモチャを自作していたのだった。

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