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第7話(3)
研究室の時計の秒針の音が鮮明に聞こえるくらい部屋の中は静まり返っていた。
俺はあの後直ぐに着替えソファに座り、目の前にレオンハルトも座ってこちらを痛いくらい冷ややかな目で見つめていた。
「…では、つまり貴方はこの2週間、瘴気の為の研究をしていた訳ではなく、この卑猥な道具を作られていたと?」
「うっ…は、はい……」
「しかも女神様に頼まれ貞操を犯す事なく行為に至れるこん…こんどむ?なるものを作られていたと?」
「コンドームです……」
俺に間違いを指摘されレオンハルトの眉毛がピクリと動いた。
「名称はどうでもいいのです。私は貴方が女神様に頼まれたとはいえ、立場を利用して我々を騙していた事の方が問題ではありませんか?」
「お、仰る通りで……」
レオンハルトの言葉に俺は何一つ否定出来ずただただ黙って聞いていた。
「しかもこの部屋で自慰行為までしているとは…まったく貴方という人は…」
レオンハルトは呆れたように溜息を吐いていた。
俺は流石に反省し、シュンとしてしまう。
レオンハルトはそんな俺を見兼ねてか、他の話題を振る。
「そういえば、先程絶頂していたのに、神聖魔法が発生していませんでしたが、既に魔法の制御の仕方を習得されたのですか?」
その言葉を聞き、俺はハッとした。久々のことですっかり忘れていた。
「そういえば…イったのに、体が光らなかった…?」
レオンハルトにされた時は、絶頂したら体が光り、神聖魔法が出ていた。しかし、今回自慰をして絶頂したのに魔法が発動しなかった。
「今日のイアンからの報告で猫目様が僅かですが自力で魔法を発現させたとありました。もしかすると、絶頂する以外の他に何か発動条件があるのかもしれません。」
「なるほど…」
たしかに、それなら今までの経緯はなんとなく納得がいくような気がする。今まで魔法の訓練も中々上手くいかなかったのが今日初めて上手く(?)いった。
「魔法を発動させた際の何か共通点はありませんか?」
「えーと……あの時は確か、イアンのアドバイスを思い出して手を伸ばして出ろ!って気合い入れて叫んでたような…」
「アドバイスですか?どのようなアドバイスを受けられたんですか?」
「うーんと、魔法を使う時は使う魔法のイメージして、そのまま念じてみてって言われたな」
「ふむ…その前は何かありましたか?」
「その前は確か、イアンにレオンハルトに笑われるぞってからかわれて…」
と、そこまで思い出して言葉が詰まる。そうだ、あの時レオンハルトを意識してしまっていたんだ。なんだか恥ずかしくて顔が少し熱くなる。
「私が何か?」
「い、いや、その!俺が魔法使えな過ぎてレオンハルトに笑われるぞってイアンにからかわれて、その、頑張らなきゃって思ったっていうか、変な意味ではないから!あはは…」
レオンハルトの話が出たと知って彼が不快に思うんじゃないかと思い、自分でもよく分からない言い訳を身振り手振りしながら必死にしていた。もしかして気があるんじゃないかと思われていたら余計に恥ずかしい。
「……私のことを考えていたんですね。」
「へ!?え、えっと……」
急に思っていたことを読まれたのかと驚いてしまった。気があるように思われたのかと思うと顔がもっと熱くなる。真っ赤になってるんじゃないかと心配になり下を向く。
「良かったです。」
「え?」
レオンハルトがふと口にする。
「もしかしたら、私が以前愚かな振る舞いをしたせいで、貴方に嫌われたのではないかと思っていたのです。」
「え?俺は別に嫌ってなんかないよ?むしろそっちが俺のこと嫌いなんじゃ…」
「いえ、貴方がこの2週間私を避けて怖がっていたように見えましたので…ですからなるべく私からは近づかないよう配慮したつもりでした。もしも本当に傷つけてしまっていたのなら謝罪いたします。」
「あ……」
レオンハルトの言葉で気づいた。もしかして、レオンハルトも俺と同じで気まずかったんだなと。俺が気まずいからとレオンハルトを避けていたせいで、彼に誤解をさせていたようだ。
「別にあれってレオンハルトのせいじゃないし、俺だって傷ついてなんかないよ。俺もレオンハルトに嫌われてるんじゃないかって誤解してたんだ。むしろ俺はその、レオンハルトもっと仲良くなりたいと思ってるよ。」
「猫目様…」
「あ!折角だから名前で呼んでよ!様もいらないし!海斗って呼んで!」
「し、しかしそれは無礼では」
「えー?イアンも名前で呼んでるし良いじゃん。皆んな様付けるし、レオンハルトだけでも呼び捨てで呼んでよ」
イアンの名前を聞いた瞬間レオンハルトの表情が一瞬冷たくなった気がしたが、すぐにいつもの真面目な表情に戻って答えた。
「分かりました海斗、では私のこともレオンとお呼びください」
俺たちは互いを見つめ、軽く微笑み合った。
「話が逸れてしまいましたが、海斗の話を聞いた限り、魔法発動の条件が曖昧でした。ですので、今後は私が直接魔法の指導を行います。」
「え?れ、レオンが?」
呼び慣れてない愛称呼びにちょっとだけ照れてしまう。レオンもサラッと海斗って呼ぶし、呼んでくれって言ったのは俺だけど、いざ呼ばれるとなんだか恥ずかしい。
「はい。当初から私が担当する予定でしたが、誤解があったようなので…誤解が解けた今、私が直接指導しつつ、海斗の発動条件について調べた方が早いと思います。」
「な、なるほど…あ、でもイアンは?」
「…イアンには本来の魔導具技師の研究に戻って貰う予定です。」
レオンは身体を前に倒して顔を近づけてくる。
「レ、レオンハルト…?」
レオンは手を伸ばして俺の髪を優しく擽る。その動作に俺の心臓がドキドキと早くなる。
「…レオンと呼んで下さいと言った筈ですよ。私に指導を受けるより、イアンの方がよろしかったですか?」
「そんなことはないけど、ただ気になって…」
この状況にイケメンを近くで見れるラッキーさよりも恥ずかしさの方が勝ってしまい、顔を逸らす。
レオンは深追いはせずまたソファへと座る。
「では明日からは私が担当します。それと、今後はこの研究室の予算などの管理も私が行いますので。」
「え!?!なんで!!?!お金無いと研究用の材料とか揃えられないじゃん!!!」
良い雰囲気だったのに、今の言葉で一瞬にして現実に戻された。俺がさっき隠したと思ってたソファの横に置かれたディルドちゃんをレオンが静かに指差し、一喝する。
「当たり前でしょう!!!!!!」
その一喝は部屋中、いや城中まで響いたんじゃないだろうか。
これからどうしよう。とレオンハルトに叱られた俺は涙目を浮かべながらこれからのエロ玩具作りの日々を案じるのであった。
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