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第8話(2)
「ッハァ〜〜ァァ〜〜………」
俺はわざとらしい、わざとらし過ぎるくらい大きな溜息を着いた。この溜息を見たレオンは普段はかけていない眼鏡を中指でクイっと押し上げながら俺を睨む。その姿もまたサマになっていらっしゃること。
「何ですかその不満そうな溜息は。今の説明ご理解いただけましたか?質問があれば受け付けますが」
俺の研究室で何故か俺はこの世界の書物を読まされ、何故かレオンが目の前で瘴気についての講義を始めていた。
「何で俺こんなことしてんの……てか何でレオン…が当たり前の様にココにいるんだよ」
レオンハルトのことをレオンと愛称で呼ぶ様になったが、未だに呼ぶ時に意識してしまう。学生の恋愛じゃないんだからそろそろ慣れようぜ俺。
照れを隠すために咳払いをする。
「当たり前でしょう。私は貴方の魔法の指導をしつつ、その発動条件を探さねばなりませんから。それに、貴方は目を離せばすぐに何か問題を起こすのですから、見張りも兼ねているのですよ」
レオンにエロ玩具作りがバレてからというもの、俺の研究室の管理や俺自身への魔法の指導をレオンが直接教えてくれることになった。けれどレオンが毎日のように見張っているため俺はエロ玩具を作るどころか、このところオナニーも出来ておらず禁欲生活を強いられている。
「目の前に好みのイケメンがいるっていうのに、そのイケメン様は貞操観念の固いノンケ野郎だなんて……」
「?何か仰いましたか?」
なんでもないですよ……と不機嫌に誤魔化しながら渋々レオンハルトの瘴気についての講義を聞いていた。
「ビエルン王国ではかつて大きな魔力の歪みによって生まれた悪魔と呼ばれる存在が、国中を瘴気という黒い霧で覆い、その瘴気によって国民は原因不明の伝染病や突然死に襲われました。
しかし、ある時女神と呼ばれる強力な神聖力を持ったを人物を召喚し、女神によって瘴気は払われ、悪魔も女神の力によって歪みの向こうに追いやり強力な神聖力で封印したのです。」
「…でも俺や受川がこの世界に呼ばれたってことは、また悪魔とかいうのが出てきたってこと?」
「その通りです。近年国内にある森林から悪魔が現れたとの報告が上がったのです。現在は瘴気が森を覆い一般人は近づけない様になっていますが、そこは受川様とアスラン王子が調査を行っています。」
「受川が調査って…ちゃんと女神らしいことしてたんだな……」
失礼ながら受川みたいな奴はそういう面倒なことはやらずにイケメンハーレム作って堕落した生活を送っていると思っていた。
「受川様は女神として森周辺で瘴気によって病にかかってしまった住民たちを献身的に介抱したり、神聖力を使って徐々にではありますが瘴気が起こっている範囲を減少させていたりと、国民のために活動して下さっているのです。」
あ、あの受川が…信じられん…。まるで本当に女神みたいじゃないか!
と、更に失礼なことを考えている俺にレオンハルトの痛いくらいの睨みの効いた視線が刺さる。
「だというのに貴方ときたら、未だに瘴気についての研究はおろか、理解もしていなかっただなんて……」
呆れるような溜息を吐かれ、罪悪感は勿論感じたが、それよりも自分の保身が勝ってしまう。
「な、なんだよ…俺だって知らない土地に飛ばされて、魔法も使えない役立たずって分かったらこの先どうしたらいいかなんて分からなかったんだよ!」
言い訳の様に聞こえて自分で言っていて更に苦しく感じる。
「だから俺、受川にエロオモチャ作ってくれって頼まれた時、自分がいた世界の知識を生かして頑張ろうって思ったけど……」
受川はこの世界の人たちのために危ない所で頑張ってたというのに、俺は呑気にくだらないグッズを制作していたという事実に情けなさを感じてしまう。柄にもなく目頭が熱くなってくる。
「…すみません、私も言い過ぎた様です。海斗も女神として召喚されたとはいえ、受川様の様にしっかりとした説明も無いまま今に至っているのですから、それはこちらの落ち度です。申し訳ありません。」
ポン、と俺の頭をレオンが優しく撫でる。
「ですから、海斗が魔法を使える様になるまで私にサポートさせてください。」
優しく撫でる手が温かい。
「…もし、それでも魔法が完全に使いこなせなかったら?」
「そうしたら、私が責任を持って貴方を保護します。貴方がこの世界で生きていけるように、これから知識や教養も身に付けられるようにしましょう」
先程とは打って変わって、優しいレオンの言葉に涙が溢れてきてしまった。
「う、うぅ〜〜……」
「!か、海斗…!?すみません、泣かせるつもりでは……」
レオンが珍しく動揺している。
俺の側まで来て背中を撫でながら落ち着かせようとしてくれる。……これはもしかしてチャンスなのでは?と俺の中の悪魔(俺)が囁いてくる。ピンと来た俺は更に泣き続けながらボソボソと呟いた。
「おれぇ、魔法使えなかったら本当にただの役立たずになっちゃうよぉ…」
「ですから、そんなことありませんよ」
「エロオモチャ作るくらいしか役に立たないのに、レオンにはそれはやるなって言われたしぃ、なんだか俺の存在意義を否定されてるみたいであんまりだヨォー」
「なっ…!私は別にそこまで否定した訳では…」
「ジャア、エロオモチャツクラセテヨォーエエーン」
「そ、それは…」
途中から段々涙が枯れてきて棒読みになってきてしまっていた様な気がするが、レオンは相変わらず俺を心配そうに見つめているので上手くいっているみたいだ。あと一押しでイケる、イケるぞ…!
「グスッ…じゃあレオンも使ってみたらいいんだよ!」
「は?」
突然の言葉に呆気に取られるレオン。俺は強引に言葉を続ける。
「だって、レオンも使ったことないからそんな風に偏見的な考えになっちゃうんだよ。だから一回俺の試作品試してから考えるのでも遅くない筈だよ。」
俺はレオンの肩を掴みソファへと押し倒し、そのまま馬乗りになる。レオンは驚いた表情で俺を見つめる。
手早くレオンのズボンのベルトを外し、テーブルの側にあった試作品の一つを手に取る。
「…一回試してみたら人生変わるよ♡」
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