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第10話(1)
ある王国の研究室。そこは魔導師団団長であるエルマ専用の部屋だ。おれは部屋にあるソファの上で全裸のまま薄いシーツに包まっていた。
「ねえ、本気でやるの…?」
不安そうに尋ねる俺にエルマは爽やかな笑顔でええ勿論。と返した。
「実は私、猫目様が神聖力を発動する瞬間をこの目で見ていました。しかもあの黄金の光!受川様とはまた違った神々しい魔力に実に興味深いと感じました!」
相変わらず大袈裟なミュージカル調な動きに残念イケメンっぷりが発揮されてしまっていた。
「ですが!貴方を一目見ようと訪れてみれば、猫目様の体からは一切!これっぽっちの!の魔力が感じられませんでした。それは何故なのか!?探求しなければ研究者としては失格ではありませんか?」
「ですので、たっぷりと貴方の身体を調べさせていただければと思いまして。」
エルマが研究室をウロウロしながら研究に必要な資料や道具なんかを揃えていた。
そして、その後ろで手を組みながらイライラした表情でエルマを睨みつけるレオンハルトが立っていた。
「御託はいい。やるならばさっさとしないか。」
う、うわーレオンさんおこだよー…俺ですら怖い…。
俺が3日間の眠りから目覚めた所にエルマがやって来たあの日の後、エルマとレオンの共同研究という形で俺の力を調査することになったようだ。
王から許可を得ている手前、中々その決定を覆す
ことは難しいらしく、この様な形になってしまったようだ。
っていうか、俺が知らない間に変なこと決めないで欲しいんだけどね??
「おやせっかちですね?折角触診検査の担当を貴方にするという条件にしてあげましたのに」
「図々しい言い方をするな。それは貴様が勝手に決めた事だろう。」
「ふふ、まあ結局のところ書記がいないと検査がままならなりませんからね。私も猫目様が実は神聖力が使えると言う事に関してはまだ王にも報告していません。」
「そうなんだ?俺はてっきり…」
「あくまで貴方の現段階の力の調査という風に伝えています。貴方は実に漬け込みやすそうですからねぇ?」
エルマがずいっと顔を近づけてくる。
「準備が出来ていない段階で使えると断言すれば猫目様を国の真の女神、真の指導者と持ち上げる派閥が出てきたりと、悪い人間が貴方を利用する可能性だってある訳です。このご時世、内乱などは起こしたくないですから」
「な、なるほど?」
難しい顔をするレオンや淡々と難しい話をするエルマを見る限りこの話はゲームの様な簡単なことではなく、現実的に起こりうる政治の話なのだろう。
エルマは今回私的な事情もあるだろうが、そういった政治事に俺が最低限巻き込まれないように配慮してくれたって訳か。
なんだか急にこの世界が現実だって思い知らされるな…。
「では、始めましょう。レオンさんは指示した通りにお願いします。」
難しい話をした直後なので緊張感が漂う。ごくっと息を呑み込み、身体をレオンの方へと向ける。
「ではまずこの、猫目様特製スライムローションを手に伸ばし、身体を弄り感度を高めて下さい。」
「ふー、ローションか…緊張するな…って!!?!」
あたかも自然にエルマが懐から出して来たものに二度見する。
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