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-After Film- 7.献身(R)

 細長い指がシャツのボタンを上から三つ、ぷつぷつと器用に外していく仕草が異様にセクシーで、思わず見入ってしまう。そうして上体を倒してきたグレンの、後ろでひとつに束ねている髪から結い損ねた分の前髪がさらりと落ちて、彫りの深い目元に陰を作った。 「少しだけ⋯⋯おしおきしようか」  耳の中に吹き込まれた声にどきりとした鼓動が下半身にまで伝って、内部の淫具をぐっと押し上げた。耐えきれずに震える肩を見逃さなかったグレンは、リオの頬を伝う涙を拭った後、尻の間に手を伸ばしてゆく。そして、僅かに外に出ている取っ手部分に指先を引っ掛けられて。 「ゃ⋯⋯、だめ⋯⋯」  淫具で感じ入るところなんて絶対に見られたくない。見られたくないのに、グレンの指でそれをくいくいと動かされると、張り出した部分がいいところに擦れて体が敏感に反応してしまう。  切れ切れの理性で必死に抵抗するも虚しく、グレンはリオの両腕をなんなくシーツに縫い付けて首筋にそっと口付けを落とした。 「ん⋯⋯っ」 久しぶりの唇の感触にその一箇所からじわりと広がっていく甘やかな快感に熱い吐息が零れると、己を組み敷く男はくすりと微笑んだ。 「これ、挿れたまま弄ったらどうなんの?」  信じられない言葉に耳を疑う。けれどももう遅くて、妖艶な笑みを浮かべた唇はリオの滑らかな肌に触れていた。鎖骨や腋にちゅ、ちゅ、と甘く吸い付かれて、薄い腹の上、濡れた舌が臍に向かって下りていくと、白い肌が興奮を示すように淡く色付いていく。 「は、ぁっ⋯⋯、」  ぞくぞくぞくと高まっていく性感に身震いしていると、臍のまわりをねっとりと舐め回した舌が今度は足の付け根を愛撫する。舌先で舐められかたと思えばちゅっとキスをされて、その度に引き締まる内腿。無意識に両足を開いて、もっと直接的な刺激が欲しいと本能が疼くのに、グレンは決してペニスには触れようとしない。  下半身はそうされながら、グレンの指が胸元へと伸びてくる。快感の予感に高鳴る胸を膨らませた時、人差し指の腹は乳頭だけを避けるようにして胸の上をくるくると撫で始めた。ゆっくりと丁寧に、乳輪をなぞるように指先が動く。 「んぅっ⋯⋯、ぁっ⋯⋯」  乳首には触れられていないのに、まるで見えない指で先端を捏ねられている甘やかな快感に体がとろけそうになる。もどかしい刺激がたまらなくて、身を捩らせながらふと見た乳首は胸の先端で赤く腫れ、触ってほしいと訴えてぴんぴんに尖りきっていた。  尿道口からは先走りがひっきりなしに溢れて、勃ち上がったペニスを伝い尻の間へ落ちていく。ペニスも乳首もグレンには直接触れられいないのに、唯一淫具だけがリオの前立腺を刺激し続けているこの状況が底知れなく歯がゆい。これが、グレンの言うお仕置きなのだろうか。 「はっ⋯⋯ぁっ⋯⋯、グレン⋯⋯」  恋しく呼ぶと、「うん?」と甘い声で目を細めて見上げてくるその眼差しが、この鬼畜な行為とは裏腹にリオを慰めるもののように思えて、余計に脳内が混乱する。 「グレン⋯⋯いじわる、しないで⋯⋯」  泣きそうな声に驚いたのか、グレンは小さく嘆息して、リオの頬を柔く撫でた。 「⋯⋯なら、ちゃんとおねだり出来たらな。どこを可愛がって欲しい?」  やっと触ってもらえると思ったのに、さらなる恥辱を強いられた。グレンの指はリオの言葉を待つように乳輪をくるくるとなぞり、煽り立てる舌先が首筋をわざとらしく舐めてきて、その快感を彷彿とさせた。 「ぁ⋯⋯、んぅ、⋯⋯そこ⋯⋯さわっ⋯⋯、て⋯⋯」 「ん?聞こえない」 「ちくび⋯⋯、さわってよ⋯⋯」 「ふは、かわいい⋯⋯いいよ。どんなふうにされたい?指で?それとも、唾液いっぱいつけて舌で舐めて欲しい?」  もう、許して欲しいのに。そうする間も胸への焦れったい愛撫は休まることなく与えられ続けて、僅かに残されていた理性が焼き切れる。 「ん⋯⋯っ、ぜんぶ⋯⋯、グレンの指も⋯⋯舌も⋯⋯全部⋯⋯僕のこと可愛がってほしい⋯⋯」  熱に酔う自分がどれだけ馬鹿なことを口走ったのか、後から悔いそうだ。けれど、同じく熱に浮かされたようなグレンの瞳がふわりと笑ったとき、もう二人でどこまででも堕ちればいいと思った。 「ふは⋯⋯、全部、な?⋯⋯仰せのままに、ご主人様」  ベッドでその言葉遣いはやめろという言い付けを破ったのは、きっとわざとだろう。  さらりと黒い髪が胸元にかかって擽ったい。間も無くして、待ち望んだ刺激が、そこに。 「ぁっ!」  グレンの舌先が、ぴちゃ、と先端に触れるだけで信じられないくらいに感じ入った。その反応に気を良くしたのか、尖らせた舌先だけで勃起した乳頭の先っぽをちろちろと撫でるように舐めてきて、巧みな舌遣いに体が溶け崩れそうになってしまう。反対側は根元から指できゅっと摘まれ、人差し指ですり潰すようにされて、別種の快感が左右の胸に送り込まれる。 「ぁ、ぁっ⋯⋯、はぁっ⋯⋯」  大きく仰け反り、グレンの唇に胸を押しつける。まるでもっとと強請るみたいに。そうすると息で笑うグレンが舌全体でこりこりになった乳首をねっとりと転がして、そのまま食むように乳輪ごと口内に含んだ。 「んぁあっ⋯⋯!」  ぢゅ、と吸引されながら突起を甘噛みされて、唇が離れたかと思うと今度は反対側の乳首を食まれる。唾液まみれになってぷるんと光る乳首は続けざまに指先でぬらぬらと捏ねられて、ひっきりなしに押し寄せてくる快感に歓ぶような喘ぎが止まらない。  グレンの指に、舌に、愛撫されている。  十日間離れていた分、刺激は快感の神経を丁寧に撫で上げるようで、その献身的な愛撫に身も心も捧げたくなってしまう。  気が付けばシャッター音は数十秒ごとに一度カシャリと鳴っていて、二人がいやらしく交わるところを延々と記録し続けている。  脂汗がじわりと背中を伝って、薄赤く染まり上がる肌がぴりぴりと痺れた。 「は、っ⋯⋯ぁ、んぅ⋯⋯っ」  吸い付くような乳首への愛撫が激しくなっていくほどに先走りがだらしなく糸を引いて尻に流れ落ちて、内部の粘膜が淫具をぎゅっと締め付ける。形の変わることなく硬く張り出したままの淫具は的確に前立腺に当たっていて、快感に下半身が疼くたび限界まで高められて――。  このままでは、淫具を挿れたまま果ててしまう。 「グレ、ン⋯⋯、こぇ、⋯⋯ぬいて⋯⋯」  縺れる舌で訴える。快感に震える唇からは涎がとろりと垂れ落ちて、みっともなくて仕方がない。それでも、このまま達することだけは絶対に避けたくて必死だった。  グレンが胸元からこちらを見上げる。その瞳に映されたのなら尚更、こんな無機質なものを挿入したまま果てるのは嫌だ。  だって、グレンがここにいるのに。 「おねが⋯⋯ぃ⋯⋯、抜いて、グレン以外で⋯⋯イキたくないぃ⋯⋯」  瞬間、グレンの動きが止まる。どうしてリオがそんなことを言ったのか、まるで分からないというような表情で僅かに目を眇めて。 「だったら、なんでこんなの使った?」  するりと手が下半身に伸ばされて、淫具を優しく握られる。  もう白状するしかない。  リオはグレンを好きだけれど、決して純粋で真っ直ぐな初恋をしているわけではない。初めての恋なくせに、最初から爛れて、欲まみれで、独占欲でどろどろなのだ。グレンが自分ではない誰かと結ばれたらどうしようなんて憂いて、たった二週間会えないくらいで音を上げて、こんな淫具なんかに手を出して。  そうでもしないと気が気でなかった。  だって、どうしようもなく――。 「さ⋯⋯びしくて⋯⋯、グレンとセックスするの妄想して⋯⋯使っちゃった⋯⋯」  もう死にたい。なんでこんなことを自ら暴露しないといけないのか。もしもあの魔女の店で、記憶を消せる薬が売っていたらいくらだって買ってグレンに飲ませる。  情けなくてほろほろと涙が出てくるのに、グレンは構うことなくリオの尻穴から淫具をずるりと引き抜きベッドの下へと放り投げた。 「なら、もうあれは捨ててくれ」  ん、と頷くリオの両腕を押さえつけて、ぴんと尖る乳首へふたたび刺激を与えるグレン。その舌の動きは先ほどよりも懐っこく、まるでリオに甘えるように顔を埋めてくる仕草に胸がきゅんきゅんとときめく。  空洞になった穴は一気に収縮して、まるで呼吸をしているかのようにはくはくと小刻みに蠢いていて。 「リオ、乳首きもちい?」 「んっ、⋯⋯ちくびきもちくて⋯⋯お尻も、なんか⋯⋯変⋯⋯」 「ならもう少し、ここ食べていい?リオが乳首でイクとこ、見たい」 「そ、んなの⋯⋯、できな⋯⋯、んっ、ぁっあっ⋯⋯」  出来ないとは言ったものの、グレンによって敏感に育てられた体は乳首への刺激だけで絶頂直前だった。  指先で片方の突起をぴんぴんと弾かれながら、もう片方を甘く噛まれたとき、どろりと重い感覚が前立腺から尿道に迸る。刹那、グレンの手のひらに臍の下あたりをすりすりと撫でられて。 「ふ、ぁっ⋯⋯っ!」  白く濁った精液がどろどろと先端から溢れ出す。全身が快感に疼いてびくんびくんと跳ねるところをうっとりと見下ろすグレンは、は、と熱い息をこぼして、着ていたシャツをがばりと脱ぎ捨てた。  熱を灯した灰色の瞳が色っぽくて、瞬きのたびにシャッターを切られているような、この感覚。体の中を巡る快感に、甘やかな期待が混じる。 「グレ⋯⋯ン⋯⋯欲しい、⋯⋯」  もう、待てない。発情しきった体で乞うと、薄灰色の真ん中できゅうっと瞳孔が動いた。  汗のせいで額に張り付いていた前髪を優しく指先で梳かれ、その手がリオの左手首を掴む。そしてその手は、グレンの下半身へと連れて行かれた。 「舐めて、リオ」  すり、と撫でたそこは灼けるような熱を溜めて、恐ろしいほどに硬くなっていた。

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