8 / 10

-After Film- 8.恋い焦がれ(R)

 すべての衣服を脱ぎ、グレンとリオは生まれたままの姿で向き合った。グレンの首には錫の首輪が光り、それは彼が今夜もリオの所有物であることを知らしめている。  快感にふわふわとした心地のままグレンの股間を見下ろせば、そそり勃つものはびきびきと血管を浮き立たせて快感の腺液を零していて。  これを、口に入れる?  口淫という行為は、これまでグレンにしてもらったことは何度もあったが、自分がした事など一度もなかった。  どこをどうやって舐めれば良いのだろう。どんなふうにすれば、グレンは喜んでくれるのだろう。それにしたって大きいし、口の中になんて収まりきるのだろうか。  不安になりながらも、そっと根本に指を添える。瞬間、グレンの熱いペニスが芯を持ってゆらりと擡げて、リオの胸がきゅんと疼いた。  可愛い。  素直に、そんなふうに思った。  いつも表情の読めない男が、ただ指で触れただけでこんなにも分かりやすい反応をしてくれて、それが新鮮で、なんというか⋯⋯可愛いという表現が一番しっくりくる。こんなグレンを、もっと見たいかもしれない。  グレンの足の間に体を滑らせ、ゆっくりと唇を近づけてゆく。彼はシーツに背中を預けながら、息を飲んでその様子を見守った。  間近で見るグレンのペニスは先端が紅く張り出し、真ん中から溢れる透明な粒が亀頭の膨らみに垂れて熟れた果実のように瑞々しく光っていて。全長は凶悪なほどなのに、ともすれば美味しそうなものにも見えてきた。  ちろりと舌を出し、おそるおそる触れると、グレンのものがまたぴくんと反応して。  やっぱりかわいい。  グレンも、いつもリオにこういう気持ちでいたのだろうか。  今度はひとおもいに、亀頭全体に唇を被せる。途端にぬるりとした粘っこい感触が舌に纏わりついて、塩辛い口当たりが鼻に通り抜けていく。これがグレンの味なのだと実感すると、尊くてたまらなかった。 「⋯⋯っ、少しずつでいいよ、リオ⋯⋯」  上からそっと髪を撫でられてる。その声に応えたくて、小さく頷いた。  指先で根本を支えながら、ゆっくりと咥えていく。太い幹に唇をぴとりと這わせて深くまで飲み込んでいくと、熱い塊が口の中でさらに硬くなった。 「んぅっ⋯⋯、」  漏れ出た息は熱を孕んでいて、まるでリオのほうが感じ入ってるみたいだ。口を大きく開いているのに根本までは咥え込めなくて、張り詰めた血管を辿って竿を上下に往復する。そうするたびに口内にじゅぷじゅぷと溢れてくる先走りが、グレンが感じていることを伝えてくれるみたいで嬉しい。 「リオ、上手だよ⋯⋯そう、ゆっくりでいいからな」  褒められるとまた嬉しくて、もっとしてあげたくなる。いつもグレンがしてくれるみたいに、雁首の段差に唇の縁を引っ掛けたり、亀頭全体をれろれろと舐め回したりして、つたない舌で夢中になって奉仕する。尖らせた舌先で裏筋をちろちろと愛撫すると頭上からくぐもった声が降ってきて、愛おしさでどうにかなってしまいそうだ。  ふと見上げると、唇に熱い吐息を乗せたグレンにうっとりと見つめられていて。その眼差しはリオの思考を蕩けさせる材料のひとつだ。奉仕しているのはリオなのに、全身が甘い感覚にとろりと包まれていく。 「ん⋯⋯、」  髪を撫でていた手がそっと耳の後ろから後頭部を包み、不意にペニスから唇が離れる。うるうるに濡れた唇と完勃ちになったペニスの間を繋ぐ、透明な糸。  リオの口端からは唾液が溢れて顎先にまで滴っているのに、脳がぽやんとしていてそれを拭うことすらできない。 「リオ、おいで」  腋の下に手を入れられて、柔く引き寄せられる。  グレンの腰に跨り、覆い被さるように両手をついて身を寄せると、すりりと頬を撫でられてキスをされた。  たった今までペニスを咥えていた唇をまるで愛おしむように濃厚に口づけされて、ふわふわした心地のままグレンの柔らかな舌を受け入れる。 「んぅ⋯⋯僕、じょうず⋯⋯だった?」 「あぁ。小さい口で一生懸命舐めてくれてた⋯⋯すげえ気持ちよかったよ、リオ」 「へへ⋯⋯、なら、またやってあげてもいいよ⋯⋯」 「そうだな、お願いするよ」  口付けの合間にそんな会話をしながら、またどちらからともなく舌を絡ませ合う。  グレンの手がさりげなく脇腹を撫でて、その指先は肌の上を擽るような動きで尻たぶまで下りてゆく。そわそわとした感覚がたまらなくて、キスをしながら腰をうねらせて尻を突き出した。 「んっ⋯⋯、ぅ、⋯⋯」  ちゅ、ちゅ、と篭った水音がする中、グレンの両手に左右の尻たぶをソフトタッチでまさぐられて、思わず腰が落ちる。瞬間、お互いの股間で硬くなったもの同士が触れて。 「んっ!」  グレンもそのことには気づいているはずなのに、素知らぬふりでキスを止めようとはしない。  円を描くように尻たぶを擽っていた指先は腰を通り背骨の上をこちょこちょと這い回り、焦れったい痒みに身悶えたとき、触れ合っていた亀頭が前後に擦れた。 「んぁっ⋯⋯、ぁっ、」  硬く張り詰めたグレンの亀頭が、ごりごりと裏筋に擦れる。たった今リオが育てたペニスの熱だ。ぬるぬると滑る互い竿が、いっそう硬さを増してゆく。  男の象徴をこんなふうに硬くして、興奮を証明し合うように先端をどろどろに濡らして、互いの中心で快感を欲しがって熱くなっている。 「⋯⋯っ、んっ⋯⋯ぅ、」  気が付けば、キスをしながらリオ自ら緩やかに腰を揺らしてしまっていた。  互いの腹に挟まれた二本のペニスは、リオが慣れない腰を送るたびにぬちゃぬちゃと音を立てて扱かれてゆく。 「はっ⋯⋯ぁ、ぐれ⋯⋯んぅ⋯⋯」  自らの腹とグレンの硬い竿を使ってペニスを扱き上げる腰は拙く、まるで初めてセックスをする雄だ。けれども蕩けそうな快感が下半身に絶え間なく押し寄せてきて、陶酔したように腰をへこへこと揺らした。  途端、背筋を撫でていた手にまろい尻を掴まれて、ぐに、と左右に拡げられたとき、この快感の主導権は彼にあるのだと悟る。 「ん、ぁあっ⋯⋯、」  中指で穴の縁をくるくると揉まれると、待ち望んだ感触に背中がしなる。挿入を期待して尻を上げた時、すぐそばにあったグレンの唇がわずかに笑んだ。 「あの淫具は二度と使わせねえけど、俺の体でオナニーするリオは最高に可愛い」   言われて耳までカァッと熱くなったけれど、尻の穴にグレンの熱をぴたりと充てがわれると、そんな羞恥も押し流されていった。  リオの舌で丁寧に育てたグレンのペニスが、ぬぷぬぷと体を割り開いていく。 「ぁ、あっ⋯⋯、ん、」  体内に熱い塊が入ってくる。  無機質な淫具なんかとは比べ物にならない、生々しい肉の温度と硬さ。それから、圧倒的な質量。粘膜越しにどくどくと伝わってくる脈動も、深くなるほど触れ合う肌の感触も、グレンだから感じることができる。 「は、ぁぁ⋯⋯、グレン⋯⋯」  体を包み込んでいく雄の香りにクラクラして、グレンの背中に縋るように抱きついた。下からゆるゆると突き上げられると快感が波のように喉元まで溢れて、くったりと力の抜けた体はされるがままに揺らされる。  熱くて、苦しくて、気持ちいい。この体の内部でグレンを包み込んでいるのだという現実に、腹の奥が満たされていく。   「すっげえ吸い付いてくる⋯⋯そんなに俺のこと待っててくれた?」 「んっ⋯⋯、ぅんっ⋯⋯」 「ふは、お前は本当⋯⋯ベッドでは素直だよなぁ」  本当はベッドでだけじゃなくて、グレンの前ではいつだって素直でいたい。そうしたらグレンにもっと好きだって言うし、もしかしたらグレンからもその言葉を聞かせてもらえるかもしれないのに。もしも本当にそんなことを言われたら、どんなに幸せだろう。   「⋯⋯、グレン⋯⋯ぼく⋯⋯っ、んっ⋯⋯ぁあっ!」  言いかけた時、下からがっちりと腰を抱かれて結合が一気に深まった。内部で反り返るペニスが腹側をごりりと抉って、外側から凹凸ある腹筋が陰嚢と竿を圧迫するから、迸る快感に肌が濡れる。  激しい律動を察して目を瞑ると片腕で後頭部を優しく抱かれて、そんな仕草にまた胸がきゅんと疼いた。同時、蠢く内部が連動するようにグレンのものを食い締めて。  この温もりを、グレンを、待っていたから。たとえ口に出せなくても体の深部がグレンに伝えている。それに応えるように、温かな手のひらがとん、と頭を撫でてくれた、直後。 「あっ!、ぁっんんっ」  きつく抱き締められながら激しく突き上げられて、逃しようのない快感に全身を貫かれる。汗に濡れた肌をぴたりと合わせて、本能のままに穿つグレンの体に必死になって抱きついた。 「ぁ、っ⋯⋯イク⋯⋯ッ、」  内部に収めるグレンの熱の形を、根本から先端まで確かめるような感覚に体が震える。精液を欲しがる内部が蠕動して、ちゅくちゅくと最奥に当たるペニスの先端をきゅうきゅうに締め付けた。 「ぅ、⋯⋯」  耳元に熱い息がかかる。腹の中が焼けるように熱くなって、グレンが中で射精したのだと知る。びくん、びくんと体を震わせるリオも、同じくどろりと重い精液をグレンの腹の上に出していた。  息を乱しながら互いの肌を抱きしめ合い、射精の感覚を共有する。まだ挿入したばかりなのに、たったこれだけで同時に果ててしまうなんて、少し気恥ずかしい。でもそれはお互い様だ。それくらいに、この熱を求めていたのだから。きっと、グレンも。 「グレン⋯⋯ぐれん⋯⋯」    濡れた肌を合わせながら唇を探し当てて舌を絡める。  髪の生え際から汗の粒が滲んでグレンの頬にぽたりと滴ると、彼の汗と混ざり合ってシーツの上に流れ落ちていった。  ぬぷ、と引き抜かれていくのが名残惜しい。尻穴からは白く濁った温かな精液がとろりと糸を引いて、その感覚すら気持ちよくてふるりと肩が震える。 「んっ⋯⋯っ、はぁっ⋯⋯」  次の瞬間、絶頂にひくひくと収縮する穴に硬いものがびたんとぶつかって、リオは目を見開いた。 「え⋯⋯、グレン⋯⋯」  すりりと尻の間で確かめると、それは間違いなく。  グレンのペニスは射精したばかりだというのに、もう熱を取り戻していた。

ともだちにシェアしよう!