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第2話

男は整った顔、モデルでもやっているのだろうか?と思えるほどきれいな顔をしていた。 「で、さっきのは何?」 「追いかけられてて」 「そっか、でもここ俺の所有する敷地なんだ。君は不法侵入者なの分かってる?」 「えっ」 思わず見回すが、人が住んでいたり使ってるような場所とは思えなかった。 「ここ、廃墟じゃないんですか?」 「廃墟にも所有者はいるの。所有者は俺、わかるか?」 「はい、すみません」 僕は状況が飲み込めてきておずおずと頭を下げた。 「どうする?いじめなら、まだ外にあいつら居たら出られないだろ?いじめられてないならすぐにでも出てって欲しいんだけど」 「あの、いじめ、られてて。今のも僕が、逃げたから」 目から無意識に涙がこぼれた。 「んなの関係ないだろ。あんな集団で追われたら逃げるのは当たり前だ」 その言葉にこらえていたものがほどけその場に膝をついて泣きだした。 「え、おい」 男は困った様に立ちあがった。 「僕、ずっと逃げてて。そんなんじゃダメだって先生にも親にも言われて……」 鳴きながら声を絞り出した。 「なるほど」 男は歩み寄ってきて、急にふわっと体が宙に浮いた。 涙をぬぐって状況を見ると、男にお姫様抱っこされていた。 「一時間くらいしたら家に送り届けてやるから、それまで奥の部屋で静かにしててくれるか?」 驚いて声が出せず黙って頷いた。 服で隠されている体は思ったより硬くて鍛え上げられているのではないかと思えた。そのせいか抱き上げられていることに安心感を覚える。 奥の部屋に入ると、そこは明るく事務所のような場所だった。 机とソファー、冷蔵庫と流し台。そして奥にはトイレのドアが見えた。 ソファーにおろされると毛布を掛けられた。 初春。暖かくもないが、寒いわけではない。しかし、何かにくるまれているのは安心する。 男はポットから急須にお湯を入れお茶を作った。そしてマグカップに注ぎ、テーブルに置いた。 「足りなければ自分で作れ。ちょっとやることがあるから。絶対に大きな音は出すなよ。絶対だ、声も出すな静かにしていてくれ」 そう念を押してさっきの薄暗い倉庫に戻っていった。 「やることって何だろう?」 疑問に思いながらも、安心できる空間と毛布、そして暖かいお茶に心解きほぐされ僕はいつの間にか寝てしまった。 声を掛けられ起きた時には外は真っ暗だった。 「もう19時だ。帰るか?」 「はい」 と返事をして起き上がる。 するとお腹がぐーっとなった。 「あっ」 ぼーっとした頭で恥ずかしさを感じながらもお腹をさすることくらいしかできない。 すると男は噴き出し笑った。 「夕食は帰って食うのか?」 「はい、一応食事は用意されてるので。食べないと文句言われるし。疲れるというか」 「そりゃ大変だな」 男は頭を撫でてきた。大きな手のひらが、くしゃくしゃと髪をかき乱しグラグラと頭が揺れた。 怖くない、安心する。 こんなに人といて安心することなんて今までになかった。

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