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第3話
倉庫を出て、外の白い壁ら出ると、開いていた隙間を男は閉めた。
「ここ、建て替えるんですか?」
「いや、人が入ってこられないようにと、多少だがこれがあると防音にもなる」
さっきも音にやけに気を使っていた。
「何をしてるんですか?」
そう聞いてハッとした。出会ったときナイフを持っていた。まさか何かの解体?
生き物だとしたら悪質だ。でも血なまぐさい匂いとかはなかった。
思い返すと鉄壁の倉庫なのにも関わらす、木の香りが濃かったような。
「秘密。別に言う必要はないだろ」
そういわれると返す言葉もない。たまたま逃げ込んだ場所で、優しくされて仲良くなれた気がした。拒絶された気がして、うつむいた。
「悪い、でも本当に話して面白いことでもないんだ。まあ、家まで送るから。家はどこ?」
「いいんです、助けてくれてありがとうございました」
と僕は歩き出した。
「もう誰もいないみたいですし、一人で大丈夫です」
「そうか、気を付けて」
頷き男に背を向けて歩き出した。
優しくされてうれしかった。安心できた。そういう場所に僕はいたい。
けどもう居られない。
そう思うと涙があふれてきた。
慌てて涙をぬぐう。
家に帰ると中は暗かった。
親は共働きで、夕食はその日によりお鍋に煮物が作られていたり、お弁当を買うようにとお金が置かれていたりした。
今日はカレーができているらしい。
温め直して食べて、風呂に入ってすぐに布団にもぐりこんだ。
「そうだ、かばん……」
あいつらに取られた。取ったら取り返しに来ると思っているんだ。もうあんなものいらない。
僕は頭から布団をかぶった。
次の日は制服を着て、学校に行くふりをして家をでた。
親は僕が出ていく姿に興味がない。ただ存在して、何かをこなしているように見える。それだけでいい様だった。
これも毒親といえるのかわからないが、いじめをされてる方に「逃げてるだけじゃダメだ」ってなんの解決策も与えてくれない相手を尊敬もできなかった。
昨日行った廃墟の前に立ってみると、昨日夜閉めたはずの隙間が空いていた。
その隙間からそっと中にはいると、なにか音が聞こえた。
しゃっしゃっと一定のリズムで何かが研がれているような音。
時折コンコンと音がする。
倉庫内を覗くと、たぶん昨日の男が、頭と口元を布で隠し、黒い服を着てなにかをしている。
ナイフでも研いでいるのだろうか?
とみていると、またコンコンと音がした。
その音は木を木箱にぶつけている音だった。
昨日のことを思い出し、音を出さないようにその場に座った。
静かに倉庫内に響く音が心地よい。
男の服の擦れる音、木が木に打ち付けられる音、小さな音一つ一つかが倉庫内に反響していた。
これがASMRというものだろうか?
木のにおいも漂っていて目を閉じると、森の中にいるような感覚になる。
少し経つと男は立ち上がり伸びをした。
「んーっ」
と伸びをしながら声をもらし、全身脱落させた。持っていた木を木箱に置くとこちらに気づいた。
「うわ、居たのか!?」
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