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第5話

受け取った紙には住所と名前が書かれていた。 「俺から、二宮浩二(にのみやこうじ)から頼まれったって言えばわかるよ。午前中のうちに頼むよ。その後は自由にしててくれていいから」 と男は顔を隠していた布を取った。 「なんでそんな格好してるの?」 「顔出ししたくないからだよ」 二宮はそういって、階段を下りて行った。 事務所に入ると二宮はスーツ姿をしていた。 「あ、仕事行くみたい」 「仕事に行くんだよ」 と笑って頭を撫でてきた。二宮は身長190センチくらいあるのだろうか?昨日も思ったが、隣に立たれると170㎝ある俺でも迫力がある。そして手も大きい。その手で撫でられるのは心地いい。 ずっとここにいたい。 なんで学校に行けとか言わないんだろう? 学校のこと聞かないのだろうか? 「それじゃ行ってくるよ。たぶん夜6時くらいには戻るかな」 二宮は腕時計を確認した。そして事務所を出ていく。 「あの、俺。藤堂汐音(とうどうしおん)です」 「あぁ、シオンってどういう字?」 「潮汐のせきに、音楽のおんです」 二宮は振り返った。 「汐吹のしおに、ちゅぱ音のおんだな」 「は?」 意味が分からず、数秒の沈黙が流れた。 「こういうネタはダメか。今度からやめるよ」 と恥ずかしそうにしながら頭を掻いていた。 その反応に意味を理解し、体が熱くなる。 「なっ、何言ってんだよ!ばか!さっさと仕事いけ!」 と怒鳴ると、二宮は笑って出かけて行った。 まさかあんなこと言う人だとは思わなかった。 あれはセクハラじゃないのか? 人の名前を何だと思ってるんだ。 午前中は言われた通り、木くずを片付け、それを言われた場所に届けた。 届け先は普通の家で、インターホンを押すと男が出てきた。 二宮と同じ歳くらい。身長は二宮さんの方が高い。 容姿は二宮さんと同じく綺麗な顔をしていた。 「ん?」 驚いた様子でこちらを見た。 「あの、二宮さんから頼まれて、これを届けに来ました」 「ああ、二宮から」 と袋を受け取り中を確認した。 「君は?」 「えっと、藤堂って言います」 「へー、俺の好きなAⅤ男優と同じ名前だな」 とさわやかに笑った。容姿がいい分輝いて見えるが、言ってることが何かおかしい。 「え、えーぶい?」 「君、童顔だな。寄ってく?」 「俺は中学生です!」 「え」 男は驚いて青ざめた。 「お前、え、大丈夫か?まさか二宮に無理やり?」 唐突に肩を掴まれ、その反応の変化に驚いた。 「無理やり?え?確かに無理やりこれを運ぶようにと言われましたが、倉庫にいさせてもらう代わりで、たいしたことではないと思います」 「如何わしいこととかされてないか?されたなら詳しく聞かせてほしい」 男は興奮気味に言い寄ってきた。 「す、すみません。俺帰ります!」 怖くなり、俺は走り出し、逃げた。 また逃げてしまった。 けど二宮さんは逃げて良いと認めてくれた。 だから迷いはない。 一度自宅によって、ゲームと漫画数冊をリュックに入れ家を出た。 両親はすでに仕事に向かった後で家の中はがらんとしていた。 普段帰った時と同じなので特になんの代わり映えもない。

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