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第6話
倉庫につくと、さっきの男が倉庫内の木に座っていた。
「うわっ」
思わず壁に隠れそっと中を覗いた。
「えー、まだ何もしてないでしょ?」
「これからするんでしょ?」
「しないよー、チュウガクセイにテーだしたらハンザイだからネー」
「なんで片言何ですか」
俺はどうしたものかと周りを見た、けど他に行き場もない。
けどせっかく居心地のよかった場所が、変な男に占領されている。
「本当に何もされてない?あの場所だったからとか、初めて会った相手だから言えなかったとかじゃない?」
男は手をひらひらさせた。
本当に何かを心配して来てくれたようだった。
「それは大丈夫です」
「じゃあ、頭撫でられてない?」
「それはされました」
そういうと男は、やっぱりかと手を顎に当てた。
「気をつけろよ、あれは中毒性がある。あの手で触られたらすべてが性感帯にされてしまうんだ」
心配して来てくれたのかと思ったらまた変なことを言い出す。大人というものはよくわからない。
「何言ってるんですか、そんなわけないでしょ」
「あるんだって!俺も触られたら全部気持ちよくなっちゃうんだから」
「それはあなたがゲイだからじゃないんですか?」
そういうと男は眉を寄せた。
「なんでゲイって知ってるんだ?」
「さっき好きなAⅤ男優って言ったじゃないですか。それくらい想像つきますよ」
「君、頭いいな」
なんだか頭が弱そうだなと思いながらも大人相手にそんな事言うのも悪い気がして黙っていた。
「俺たち芸大卒なんだ。それで俺もあいつも芸術系の仕事にはつけず別の仕事をしてるんだ。でも、やっぱ何か作るのは好きでさ、二宮は木彫り、俺はそいつの出した木くずに色を付けたり加工したりして小物を作ってるんだ」
「え、そんな事してるんですか?」
「そ、楽しいよ。君は何か作らないの?」
何か作る。そんな事、考えたこともなかった。
「えっと、何か作るとかできなくて。不器用だから」
「じゃあ裏方やれば?」
男は言った。
「俺の趣味でも裏方は必要だったりするしさ。主に雑用だけど、人手はあると本当に助かるんだ。たぶん二宮も手伝いがあると助かると思うよ」
「裏方か、どんな仕事があるのか想像つかないけど」
「じゃあ、今から家に来て手伝う?」
話の流れで危なそうなこの男の家に来てしまった。
「今日は本来の仕事が休みだから、二宮の撮影した動画の編集をするんだ」
とノートパソコンを開いた。仕事内容は思ったより普通でホッとした。
のもつかの間、厭らしい男の喘ぎ声が流れ出した。
「おっと間違えた」
と男は音を止めた。絶対わざとだろと思いながら隣に座る。
「あ、俺、和樹」
「和樹?苗字は?」
「ないよ」
和樹はそういうと、昨日撮ったであろう動画をよみこんで、編集画面を見せてきた。
「とりあえず今日は見てて」
と和樹は動画を編集し始めた。
「名前は?」
と聞かれ、
「汐音です」
「どういう字?」
そう聞かれ少し黙った。疑問に思ったのか、和樹は振り返る。
「し、汐吹のしおに、ちゅぱ音のおんです……」
と言うと和樹は噴き出した。
「それ二宮が考えたやつだろ?そんな顔真っ赤にし言うなんて初々しいw」
と大笑いしてお腹を抱えていた。
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