7 / 8
第7話
「なんでそんな二人とも、エロい事平気で言えるんですか?」
「ん?えへへ」
と和樹は笑った。笑っただけで何も教えてはくれなかった。
「言いたくないなら良いですけど」
「まあ、おいおいね」
と和樹は編集の続きを始めた。
時折、編集のポイントや、操作方法を教わった。
ダダ流れの一本の動画が見事に10分程度の尺に収まり、画面の切り替わりも滑らかで、音も聞いてて心地よい。
「こうやって編集できるのは、撮るときに二宮が音の切り替わりを気にして、音をしっかり止めてくれたりするからなんだ。撮影するのも大変なんだよ。場所によっては雑音も多いし。それを考えるとあの倉庫は住宅街にあって、車の通りも少ないから雑音も発生しにくいんだよ。周りの生活習慣を把握すれば何時が一番いいかもわかるしね」
と撮影の方で気を付ける点なども教えてくれた。
知らないことが多い。そう感じてみていると、おもむろに和樹は僕の手を取って撫でてきた。
「ケガした跡があるな。何かあった?」
両親も気づかないその傷跡に気付いた和樹に驚いた。
「これは、犬に……」
「犬?野良犬?」
「いえ……違くて」
いじめられたとは言えずに黙った。
「おなかすいてない?」
「そういえば、すいたかも」
「買い物行こうか」
と和樹は立ち上がった。
昼には焼きそばを作り、二人で食べて、午後はゲームをした。
お互いゲームを持っていたのでそれなりに楽しめた。
楽しい日は一日が速い。
話には聞いていたけど、初めて実感した。
和樹といるのは楽しかった。初めて会って、年も離れていて、相手のことなんてほとんど知らない。なのにこんなに楽しめるなんて思わなかった。
「帰りたくないなー」
暗くなりはじめ、ぼやいた。すると和樹は頭を撫でてきた。
「じゃあ泊ってくか?」
「んー」
と考えて
「二宮さんの方がなで心地良いのでやめときます」
「どういう意味だよ!」
とわしゃわしゃ髪を乱された。
和樹の電話が鳴り、出た。
「ああ、うん……、来たよ。今俺の隣で寝てる」
和樹がそういうと「は!?」と電話の向こうから声が聞こえた。
「返してほしければ、夕食に牛丼を買ってこい」
と言って少し話して電話を切った。
「なんか二宮すごい怒ってた。なんでだろう?」
「和樹さんが変な嘘つくからじゃないですか?」
ちょっとイラっとしながら返すと、和樹は笑って立ち上がった。
「二宮が夕食は買ってきてくれるから食ってけよ」
家に漫画を取りに行った時のことを思い返した。
今日の夕食はお金が置いてあって、弁当を買う様書かれていた。そのお金は持ってきていた。
「わかりました。お金は払います」
「おー、できた子供だなー」
と和樹はお湯を沸かし始めた。
二宮が来るとどたどたとリビングに入ってきた。
「汐音、大丈夫か!?何かされなかったか!?無理やりされて何も言えないとかやめろよ!あいつがやったことは犯罪だからな!」
「ちょっと、俺のこと犯罪者にするのやめてよー。まだ何もしてないってば―」
和樹も二宮もお互い疑心しつつ、どこか信頼しあっているようにも見える。そして二人とも、僕のことを本当に心配してくれている。それが分かった。
「大丈夫です、和樹さんとは、その……」
そこでふと別のことが頭をよぎった
ともだちにシェアしよう!