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第一章・3
「う……」
「あ、気が付いた」
ここは、と秀実は瞼を開けて天井を見た。
知らない、天井。
「ここ、どこですか?」
「カフェのスタッフルームだよ。よく寝たなぁ、君は」
そう答えてくれたのは……。
「く、組長さん!」
秀実は、慌てて跳ね起きた。
「ああ、そう怖がらなくてもいい。何もしやしないから」
体には、毛布が掛けてある。
どうりで、ぐっすり眠れたわけだ。
「ありがとうございます」
秀実は目の前の士郎に、素直にお礼を言ったが、優しいまなざしをしているのは彼一人。
彼を取り巻く数名の男たちは皆、胡散臭げな表情だ。
「他の組のスパイかもしれませんぜ」
「サツ(警察)の犬かも」
ざわつく男たちを、カフェのマスターが鎮めた。
「仮にも士郎さんが拾ったタマだ。滅相なことを言うな」
で、と熟年のマスターは、渋い声で士郎に問うた。
「こいつの処分は、どうなさるおつもりで?」
秀実は、ヒヤリとした。
(殺されて、山に埋められるかもしれない!)
だが、士郎の声は明るかった。
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