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第一章・4

「可愛いから連れて帰りたいんだけど、ダメ?」 「坊(ぼん)! また悪い癖が! 子どもの頃にネコを拾っては連れて帰り、先代に散々叱られなすったことを、お忘れで!?」 「真田(さなだ)、坊はいいかげんやめてくれ、って言ったろ?」  失礼しました、と真田は黙ったが、不満げな目つきはそのままだ。  その鋭い目に、秀実は竦み上がった。 「堅気さんを、怖がらせちゃいけないよ。君、名前は何て言うの?」 「水流 秀実です」 「年齢は?」 「20歳です」  嘘だ、と周囲がざわめいた。  とても成人しているとは思えない、痩せて華奢な体。  丸い目の、童顔。  まだ高校生と言っても、通用するだろう。 「第二性は?」 「Ωです」  なるほど、と再び周囲がざわめいた。  Ωの男子は、体格に恵まれない者が多い。  彼も、そんな一人なのだろう。  ぱん、と士郎は手を打った。 「決まりだ。秀実くん、私の付き人にならないか?」 「付き人?」  秀実は、おうむ返しに言葉をなぞった。

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