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第一章・7
「僕が、組長さんの付き人になったんだよね?」
いろいろと世話を焼いてくれる士郎は、まるで逆に秀実の付き人のようだ。
まだ得体のしれないところはあるが、悪い人ではないらしい。
「悪くないヤクザ、なんているのかな」
ふと、そんな思いが頭をよぎった。
ヤクザのシノギと言えば、特殊詐欺や麻薬を真っ先に思い浮かべる秀実だ。
「まさか、あの人がそんな悪事を働いてるなんて、思えないけど……」
いや、と秀実は頭を振った。
このままでは、野垂れ死んでしまう身の上の僕を救ってくれたのは、間違いなく組長さんなんだ。
「僕のことも、話さなきゃ。そして」
組長さんのことも、もっと深く知りたい。
用意された部屋着は、きちんとたたまれていた。
袖を通すと、ふんわりと良い香りがした。
「でも、ぶかぶかだ」
秀実は、そこでようやく微笑んだ。
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