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第二章 優しい人の背中には

 キーマカレーに、イカのマリネサラダ。カボチャの冷製ポタージュに、キノコのハーブソテー。  士郎が用意した夕食を、秀実はぺろりと平らげた。 「秀実くん、まだお腹に入りそう?」 「え? あ、はい」  じゃあさ、と士郎はまるで子どもが食べるくらいの量のキーマカレーを、そのまま彼に差し出した。 「私の分も、食べてくれないかな」 「でも」  秀実は心配した。  自分より一回りも体の大きな士郎が、カロリーの少ない副菜しか食べないのは良くないのでは? 「最近、太っちゃって。少し体を絞らないといけないんだ」  そういえば、お昼もそんなことを言ってたっけ。  秀実は、士郎と真田のやりとりを思い出していた。 「私は料理を作ることも、食べることも好きなんだ。それが祟って、ね」  眉をハの字に下げて、士郎はお腹周りをさすってみせた。  とても肥満には程遠い、引き締まった肉体の持ち主に見えるが……。 「組長さんは、太ってなんかいませんよ」 「ありがとう。でも、仕事に差しさわりがあるんでね。ちょっと減量しなきゃならない」  だから、と士郎は指を組んでその上に顎を乗せた。 「私が作る料理、君に食べて欲しいんだよ。君は、痩せすぎ。もっと太らなきゃならない」  Win-Winの関係だ、と士郎はにっこり笑った。

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