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第二章・3

『彼もきちんと体を作れば、撮影の仕事に参加できるかも』  撮影って、AVの撮影のことだったんだ! 「あのッ! 僕は、僕も、いずれはその、俳優になるんですか!?」 「君が嫌なら、別にならなくてもいいよ。あれは、真田を納得させるための方便さ」  しばらくは、私の付き人だ。 「背中を流してもらったり、家事をやってもらったり、荷物を持ってもらったり。そんなところさ」  安心して、と微笑む士郎の顔は、今まで会って来た人の誰よりも優しかった。 「それより、君のことを知りたいな。秀実くんは、どうして食い逃げするまで追い詰められていたんだい?」 「食い逃げしてません!」  一応訂正しておいて、秀実は自らの境遇を語り始めた。 「奨学金で大学に通ってたんですが、親からの仕送りが止まって。バイトするにも、雇ってもらえなくて。光熱費も家賃も食費も無くなって、それで」 「どうして仕送りが止まったんだい?」 「僕、αの兄がいるんですが、兄は教育費を親に払ってもらってるんです。その上、自動車学校に通い始めたので」 「しわ寄せが、秀実くんに来たのか」  端的だったが、それだけで士郎には秀実の家庭がうかがえた。  優秀なαの兄を溺愛する、両親。  かたや、その割を食って愛情不足に育ったΩの秀実。  おそらく両親は、秀実がここまで困窮しているとは知らないだろう。 「辛かったな」  ただ一言、そう言って士郎は秀実の肩を叩いた。

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