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第三章・5

「ああ、楽しかった! ね、秀実くん!」 「はい……」 「あ、ごめん。疲れた?」 「いいえ、大丈夫です。でも」  何かな、と士郎はコーヒーカップを置いた。 「こんなに、よくしてもらって。どうしてですか? なぜ、近藤さんは僕なんかに、こんなに親切にしてくださるんですか?」  それには、士郎は難しい顔をした。 「はて。なぜだろうね?」 「真田さんには、『可愛いから連れて帰ってもいい?』と」  うん、と伸びをしながら、士郎は答えた。 「確かに秀実くんは、可愛いよ。でも、それだけではない何かを、感じる」 「何でしょう」 「強いて言えば、放っておけないから、かな?」  自分でもよく解らない、と士郎は言う。 「ただ、亡くなった父や祖父は、困っている人がいたら手を差し伸べろ、と私に何度も言っていた。それが働いたのかもしれない」  それとも、所持金ゼロでカフェに入る度胸を買ったのかな、と笑った。 「あれはもう……、忘れてください」 「体で払います! 何て言ってたね」  そこで士郎は、身を乗り出した。 「払ってもらおうじゃないか、その体で」  ひゅっ、と秀実は息を呑んだ。

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