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第三章・6
まさか、僕をAVの撮影に!
いや、もしかして、近藤さんの愛人に!
「今、邪なことを考えているだろう。秀実くん」
士郎は彼の二の腕を、片手で掴んだ。
「この体、きちんと作り直すんだ。それが、君の仕事の一つ」
「じゃあ、AVや愛人は」
「君、痩せすぎて発情も止まってるだろう? そんな子に、撮影は任せられないよ……、ん? 愛人?」
「あ! いえ! 何でもありません!」
そういう意味で、体で払ってもらうよ、と士郎は秀実をジムに連れて行った。
会員制の、セレブなジムだ。
「筋トレが負担なようなら、まずスイミングから始めるといい。私も通ってるんだ」
よく食べ、よく動き、よく寝る。
それが、秀実に課せられた仕事だった。
「でも、近藤さんの付き人をしないと」
「ぼちぼち、でいいよ。それとも、撮影現場まで付いて来て、私の濡れ場を見物するかい?」
「いいえ!」
真っ赤になってしまった秀実を軽やかに笑い、士郎は彼の肩を叩いた。
「そのうち、自動車学校へ通うことにしよう。免許がないと、就職にも不利だ」
やるべきことは、たくさんあるぞ。
そう言って、拳を振り上げる士郎だ。
彼の明るい前向きな性格を、秀実は眩しく感じた。
兄の日陰で育ってきた自分に、太陽が射した心地がした。
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