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第四章 突然の発情

 秀実が士郎のもとで暮らし始めて、一ヶ月ほど経っていた。  士郎の作る栄養たっぷりの食事とジム通いで、秀実の体はどんどん健康を取り戻していった。 「秀実くん、シャツ脱いで」 「はい」  線が細いのは相変わらずだが、その上半身は肉付きが良く、あばら骨など見えていない。 「うんうん。ずいぶん筋肉が付いた!」 「ありがとうございます!」  時々こうして、士郎は秀実の体を確かめる。  だが、それが大人の関係に発展することはなかった。 (僕、そんなに魅力ないのかな……)  バスタイムに、姿見でその体つきを自分でも眺める秀実だ。  体重計に乗ることも、怖くはなくなった。  細マッチョ、とまではいかないが、貧相ではない体つき。  しなやかな線は、中性的な魅力に溢れていた。  それでも、士郎は秀実を求めない。  同じベッドで横になっても、健康的にぐうぐう眠るだけだ。 (もしかすると、近藤さんにはもう恋人がいるのかもしれない)  そう思うと、胸がチクリと痛んだ。 「え? 何、今のは」  近藤さんに恋人がいて、何か悪いことある!?  自分の心に芽生え始めた士郎への思慕に、まだ気づかない秀実だった。

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