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第五章・3

「私は、堅気の人間じゃないんだよ。それでもいいのか!?」 「いいです!」  短い、どこか滑稽な秀実の返事。  だが、情念がこもっていた。  これ以上ない思慕が、宿っていた。 「じゃあ、行こうか」  士郎は秀実を軽々と抱くと、寝室へ向かって歩き始めた。  歩きながらも、懇々と諭す。 「ヤクザに抱かれた履歴が、その身体に刻まれるんだぞ」 「構いません」 「表社会へ、戻れなくなるかもしれないんだぞ」 「それでもいいです」  やれやれ、と士郎は降参した。  この発情したΩくんを鎮めるには、一発抜いてやるしかない。  小さく身体を折り曲げた秀実を大切にベッドに寝かせると、士郎はスーツを脱ぎ始めた。 「秀実も、脱いで」 「ひ、秀実!?」  くらくら来た。  近藤さん、いや、士郎さんに、呼び捨てされた。  それは、今までより深い仲になった証のようで、秀実をのぼせ上らせた。

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