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第六章 士郎の優しさ
寝室のアロマが降参するほど、牡の匂いが立ち込めていた。
「あ、はぁ、はぁ。あ、また……ッ、んぁああ!」
もう何度目になるか知れない精を、秀実は放っていた。
びくびくと震える身体。
引き攣る手足。
首を反らせ、髪を散らした。
「士郎、さん。イッてるから。今、イッてるからぁあ!」
構わず抽挿を続ける意地悪な士郎の背中に、秀実は爪を立てた。
竜の踊る、絢爛たる背に、しがみついた。
絶え間なく精を吐く、秀実のペニス。
勃ちっぱなし、イきっぱなし、吐きっぱなしの状態が続いていた。
それでも士郎は、ただの一度も射精していない。
撮影で慣れたその身体は、しっかりコントロールされていた。
「士郎さん、士郎さん」
これだけ快楽を与えられながら、まだ、もっととねだる秀実。
「まだ欲しいのか? 欲張りだな、秀実は」
「欲しい、です。もっと。もっと、士郎さんが欲しい!」
秀実の腰は淫靡に波打ち、士郎におねだりを訴えて来る。
解ってる。
秀実が欲しいものは、本当の絶頂。
だが、ここまで来ておきながら士郎は迷っていた。
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