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第六章・8

 士郎は、組の事務所で会議を行っていた。 「先月の売り上げ、かんばしくないな」 「これで三ヶ月連続の落ち込みです」  手元の資料とパワーポイントのグラフを眺めて、頭をひねる。 「撮影班で何か意見のある者がいれば、聞かせてくれ」  近藤組のシノギの一つ、AV販売。  この業績が、最近低迷しているのだ。 「やはり、ミチルなど慣れた俳優が抜けたことが大きいかと」 「ミチルくん、売れっ子だったもんね」 「名が売れたのは、うちの動画に参加したからですぜ。それを恩知らずな!」 「まあ、彼には彼の人生があるさ」  ずっと腕組みをして聞いていた真田が、初めて口を開いた。 「坊、それです」 「それ、って?」  坊が、優しすぎます、と真田は言う。 「組長ですのに『近藤さんと呼べ』から始まって! 抜けた俳優には『彼の人生が』などと甘いことをおっしゃる!」 「真田、厳しいなぁ」 「今後の撮影には、少し辛く現実を投影していただきたいですな」 「例えば?」  組の全員が、同じ考えを持ってはいるのだろう。  うなずく者が、大勢いる。  そんな中、真田は語った。 「世間様がヤクザ動画に求めるものは、非情です。非情の、激エロです」 「真田、50歳過ぎた大人が『激エロ』とか言う?」 「次回の撮影は、凌辱もの! これしかありません!」 「え!?」  士郎は固まってしまった。

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