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第七章 僕やります!

「次回の撮影は、凌辱もの! これしかありません!」  真田の激しい言葉に、士郎は固まった。 「主演は、水流でどうですか。士郎さんとカフェに来るたびに、体もできています」 「い、いや。彼は俳優じゃないから」 「慣れていない分、演技に迫力が出ます」 「しかし、凌辱、だなんて。主演が可哀想だよ」 「これは、ビジネスですよ。本当に犯すわけじゃない」  渋る士郎に、別の声がかけられた。 「近藤さんの代わりに、私が相手役になってもいいですが」  見ると、士郎と同じくAV俳優を務める、多胡(たこ)だ。  スキンヘッドの、ガチムチマッチョ。  日焼けサロンで焼いた肌。  彼のファンも、多い。 「いや……、やるなら私が相手役をするよ」  多胡にレイプもどきをされたなら、秀実は何度失神することか。  だけど、と士郎は条件を出した。 「彼、秀実が拒否したなら、この話は無しだ。他の俳優でやる」 「一ヶ月も士郎さんに世話になっておきながら、それはないでしょう」 「それから、彼がやると決めたなら、初めての撮影はノーマルでいくから」 「どこまでも甘いですな、坊」  何とでも言ってくれ、と士郎は唇をとがらせた。 「これが、私のスタンスだ。極道だからきれいな仕事をしてはいけない、という決まりはない」  組員たちの前、そんなことを言ったが、胸の内は困り果てていた。 (秀実をAV俳優に、だなんて)  彼に、何と言って切り出せばいいのやら。  重い宿題を抱えて、士郎は帰宅した。

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